米大統領選最終討論会の本当の勝者 蟹瀬誠一の「ニュースを笑え」2016年10月21日号

●米大統領選最終討論会の勝者

泥仕合だとか歴史上最低の大統領選だと思いながらも、最終となる3回目の米大統領選討論会もやっぱり全編見てしまった。

終わってみれば勝者が意外なところにいた。ドナルド・トランプでもヒラリー・クリントンでもない。司会を務めたフォックスニュースのキャスター、クリス・ウォレス(69)である。

フォックスニュースといえば金儲け最優先のメディア王ルパート・マドックが1996年に設立したニュース専門放送局。出演者は美男・美女が多く煽情的な報道が売り物だ。湾岸戦争の際には”アメリカ万歳“という国粋的なニュース一色で視聴率を稼いだ。だからウォレスもてっきりセンセーショナルで毒々しい質問を浴びせるのかと思いきや、最初の質問は連邦最高裁の憲法解釈について。正直驚いた。

トランプが武器所有権を保障する憲法修正第2条が必要だと力説すれば、ヒラリーは同性婚や人口中絶を認めるべきだと主張。

次に取り上げたのが移民問題。トランプがヒラリーは「国境を開放しようとしている」と攻め立てれば、ヒラリーは「国境強化に賛成」だと反論。その時すかさず、告発サイト「ウィキリークス」が暴露したメールを引用して、ヒラリーが開かれた国境を支持すると表明したことを指摘したのはウォレスだった。

それまでの2回の討論会では司会者が明らかにヒラリー寄りだったが、ウォレスは中立を保ちながらスキャンダルではなく政策に焦点を絞っていた。

ようやく大統領候補同士の討論会らしくなった。と思ったら、その後がいけない。窮地に追い込まれたヒラリーがロシアのサイバー攻撃を持ち出し、トランプをプーチンロシア大統領の「操り人形」と罵ったのだ。それがきっかけとなってこれまで通りの泥仕合に逆戻り。さすがのウォレスもお手上げとなった。それでもよくやった方だろう。

●銃規制

 銃規制はこれまでの大統領選でも必ずといっていいほど論争となるテーマだ。米国では驚くなかれ…

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