ソニーは持ち株会社化で蘇るか
10月26日、ソニーは「イメージング・プロダクツ&ソリューションセクター」を分社化すると発表した。この事業部門はデジカメなど民生用カメラ事業や放送・業務用機器事業、メディカル事業など複数の事業を担当するものである。これらの事業を100%出資して設立する完全子会社「ソニーイメージプロダクツ&ソリューション株式会社」に移管するというのである。
営業開始は翌17年4月を予定している。社長には、事業担当の執行役を務めていた石塚茂樹氏が就任する。ソニーは平井政権下の15年2月に発表した中期経営計画で、エレクトロニクス事業をすべて分社化する方針を打ち出し、テレビ事業やビデオ・オーディオ事業などを順次分社化してきていた。今回の分社化は、残されていた最後の事業部門である。
ソニーは、なお分社化の目的を
《株主視点に立った結果責任・説明責任の明確化、持続的な利益創出を念頭においた経営、意思決定の迅速化と事業競争力の強化を徹底するため》
と発表しているが、言葉通りのものかどうかはいまのところ分からない。というのも、エレクトロニクス事業、とくにAV事業はコア事業とは見なされず、投資を控える事業対象になっているからだ。投資をしなくて市場を牽引するような画期的な製品が生みだせるとは到底思えないが、もしかしたらソニーの経営首脳は可能だと考えているのかも知れない。この判断は常人の理解を超えるので、ここではコメントは控える。
今後、ソニー本社はグループ全体の戦略や研究開発などを担う「持ち株会社」の役割・機能に特化していくと考えられている。たしかに、世界的なAVメーカーであるソニーは、いまや本業であるエレクトロニクス事業以外にも金融、映画・音楽などのエンタテイメント、ゲームなどを抱える複合企業グループに成長している。
そのためソニー本社は事業会社としてだけでなく、企業グループ運営の「持ち株会社」的な機能を求められてきたという経緯があった。その意味では、ソニー本社を「持ち株会社」として企業グループの運営を目指すのは、正しい選択といえるだろう。
しかし問題は、その分社化の仕方にある。ソニーが「持ち株会社」機能を求められるキッカケになったのは…
【目 次】
1.はじめに 受け入れる「勇気」
2.コラム「深眼」 息子との対話
3.企業探訪 ソニーの分社化と持ち株会社化
4.ルポ「現代の風景」 CEATEC:パナソニックのIoTへの挑戦