一体、韓国はどうなってしまったのか。一時は日の出の勢いで、社会も経済も先進国に肩を並べる地位にあったのにここ2、3年で国は混乱を極め、かつての輝きは全くない。
最も懸念されているのは政界だ。朴槿恵大統領の生い立ちは悲劇に包まれている。学生時代は西江大学電子工学科を首席で卒業後、フランスのグルノーブル大学に留学した。留学中に文世光事件が発生し、母の陸英修さんが暗殺されたことから悲劇が始まる。74年に帰国すると、父の朴正煕大統領のファーストレディー役を務めていたが、その父も79年に暗殺される。
その後、財団理事長などを務め、98年に国会議員となり政界入りした。2004年にハンナラ党首に就任し中国の胡錦濤国家主席や小泉首相とも会談している。だが06年に顔を暴漢に切り付けられ60針を縫う手術も受けた。盧武鉉(ノムヒョン)、李明博(イミョンバク)大統領の後を受け、ハンナラ党を改称したセヌリ党から大統領選に立候補して13年2月に第18代大統領選に就任し、親娘二代が大統領となったのである。当初は支持率が63%に達するほど人気もあった。
しかし16年10月末に発覚した友人崔順実(チェスンシル)女史が国政に関与。財団などから金銭を受け取り、朴大統領もそのことを知っていたのではないかと報道された途端に支持率が4%台にまで急落した。国民の大抗議デモを背景に国会で弾劾訴追が可決され、12月から大統領の職務が停止されてしまった。朴一族はまるで呪われた運命に翻弄されているかのようだ。
こうして政局が混乱している間に韓国の財閥も次々と問題を起こし経済界も混乱中だ。大韓航空の趙顕娥(チョヒナ)副社長が客室乗務員の態度に腹を立て機体を離陸直前に引き返させた"ナッツ・リターン"事件、ロッテグループの裏金工作とお家騒動、最大財閥サムスングループトップの収賄問題、ハンファグループやSKグループ最高幹部クラスの横領や背任などの犯罪も次々報道されている。
さらに日韓間では日本総領事館前の公道に慰安婦像設置の嫌がらせや、長崎県対馬市の寺から仏像を盗んだ事件などについて、日本政府が抗議しても解決にあたろうとしている気配がない上、日韓中の首脳会談も韓国政局の混乱で延期されたままだ。また社会も出自の違いが出る「金の匙、銀の匙、土の匙」というスプーン階級論まで話題となっている。こうした不満が大々的な大統領弾劾や反日デモの底流になっているとみられる。
韓国は、新興国の優等生として成長してきた。しかしながら、ここ2、3年で政、経、社会とも混乱の極に至りつつある。韓国は激しく動きだすと止まらなくなる傾向がある。混乱が止まないと北の思う壺に陥ろう。
【財界 2017年3月7日号 第442回】