■先行き不透明の東芝・慰安婦問題と日韓関係・三井造船株への投資
今月25日、「長谷川慶太郎の大局を読む緊急版」の『大転換』(発行:李白社、発売:徳間書店)が発売されます。いよいよ20日にドナルド・トランプ氏はアメリカ大統領に就任しますが、『大転換』では大型減税、インフラ投資、金融規制改革、エネルギー規制改革などその経済・財政政策であるトランプノミクスの中身を広く深く解説しました。また、トランプ政権の国際政治および国際経済に与える影響についても詳述しています。ぜひご一読下さい。
●経営が上向いてきた矢先に東芝を突然襲った原子力事業の減損損失
東芝の2016年度上期(2016年4月~9月)連結決算は、売上高が前年同期比4.3%減の2兆5790億円となったものの、営業損益は前年同期の891億円の赤字から968億円の黒字へと転換しました。税引前利益は60.1%増の675億円、当期純利益も209.2%増の1153億円となったのでした。これを受けて2016年通期見通しが上方修正され、売上高は3000億円増の5兆4000億円、営業損益は600億円増の1800億円、税引前利益は450億円増の1300億円、当期純利益も450億円増の1450億円と期初の計画と比べていずれも増やしたのでした。
2015年に粉飾決算が発覚して経営が悪化した東芝は、苦境を乗り切るために家電やパソコンの部門を中心に1万4000人規模の人員削減を実施し、白物家電を中国企業へ、医療機器子会社をキヤノンへとそれぞれ売却しました。以後、半導体メモリー事業と原子力事業を2本柱として経営の建て直しに取り組んできたところ、中国系メーカーのスマホ向け半導体メモリーの大幅な需要増などがあって2016年度上期連結決算では好調な実績となったのです。
ところが昨年12月27日、東芝は「2017年3月期にアメリカの原子力事業で数千億円(数十億ドル)規模の減損損失が出るかもしれない」と発表しました。減損損失というのは、企業の持つ資産が実際の価値よりも低かったとき、会計上、その実際の水準まで資産価値を引き下げるという処理です。これによって自己資本比率の低下などが起こり、企業の財務は悪化してしまいます。
アメリカの原発メーカーのWH(ウエスチングハウス)は東芝の子会社ですが、今回の減損損失は、WHが2015年末に買収した原発建設を手がける工事会社の資産価値が低かったために発生したのでした。最近までそれを見抜けなかったのは東芝の監査部門の人々の目が節穴だったからです。