日本人:国際捕鯨員会からの脱退はなぜ起きたのか?~武田邦彦集中講座

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◆国際捕鯨委員会の脱退を発表した日本。反捕鯨国との双方の主張まとめ

昨年(2018年)の暮、日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を発表した。直接的には、9月に行われたIWCの総会での日本の提案が否決されたことだが、長年にわたり捕鯨支持国と反捕鯨国の争いに「我慢も限界」というところもあります。

でも、この問題をどのようにとらえたらよいのでしょうか?どうしてもクジラのような問題になると、外国が反捕鯨であるのを感情的に反発したくなります。たとえば、「クジラは採ってはいけないが、牛は殺してもよいのか?」とか「かつての捕鯨国といえばアメリカじゃないか」というような論拠です。

確かに、白人は「俺たち白人だけが神様から作られた」「黒人は奴隷にしてよい。神様があんなに黒い人間を作るはずはない」などというややねじれたキリスト教の考えなので、自分勝手なところもありますが、外国のことを考える時には、「自分が外人になったつもり」になる必要があります。

主要な反捕鯨国の主張は、以下のようなものです。

1)人の食料になるために定められ、飼育される牛や豚と、野生に生きている動物は違う。野生はできるだけ食料にしないようにする。

2)魚は人間とかなり違うが、クジラは人間と同じ哺乳動物である。そして、事実、クジラやイルカは可愛いし、親近感もある。

3)どうしても動物性たんぱく質が取れないような国なら別だが、日本のような先進国がいまさらクジラを取る必要はない。

これに対して、日本が反論していた論点や日本の世論は次の通りです。

1)クジラの数は一時、乱獲で減ってきたが、このところ増えている。管理して採れば問題ない。

2)日本は伝統的にクジラ漁が盛んであり、漁業の分野の一つである。クジラを食べたいという国民も多い。

3)アメリカはかつてマッコウクジラを多くとっていたし、今さら禁止するのはおかしい。環境保護団体などの一部の団体の言う通りにはならない。

双方とも当たり前の主張をしているようですが、日本は「クジラを取るために、反捕鯨国を説得する」という立場なのですから、自分の主張を言うとともに、相手の主張を崩す必要があります。ところが、相手の言うことにはほとんど耳を傾けず、ただ自分の主張だけを繰り返したのです。

◆国会での罵倒然り。反捕鯨国と決裂するのは当然な、日本の議論の仕方

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