【謝罪プロは見た】なぜアンジャッシュ渡部氏の復帰が難しいのか

女性問題で活動自粛していたアンジャッシュの渡部さんが千葉テレビの番組で復活。その日の放送を見ましたが、まだまだ復帰がかないそうには見えない状況です。なぜここまで復帰が難しいのでしょう・・・

・イケメン芸人という位置エネルギー

スキャンダル前の渡部さんといえば、ポンコツキャラの相方・児島さんに比べて、イケメン・グルメ・美人嫁などなどの輝かしい立ち位置にいました。演芸番組で見ることもほぼなく、テレビでは芸人というより、文化人タレント的な仕事ばかりが目立っていたと思います。

これが危険信号だという自覚があったかです。

テレビの制作は正にプロの仕事で、バカバカしいバラエティ番組で、ただ芸人さんやタレントがふざけてるだけに見えるものであっても、実はしっかりと下準備から構成まで、プロの手で作られています。

相方児島さんは、超人気ドラマ「半沢直樹」出演のように実は演技でも好評だった一方、バラエティでは相変わらずイジられまくっています。芸人ではない素人のタレントやアナウンサーからすら「大島さん」と呼ばれるのは既にお約束。人柄の良さもあって評価が高いところに、渡部さんスキャンダルでも支える姿勢が感銘を呼び、その存在はますます高まっているようです。

しかし渡部さんといえばおふざけバラエティにはほぼ出ず、出てもイジってくるのは現在のバラエティの帝王・有吉さんだけです。こうして渡部さんの文化人に堕する流れはどんどん加速していったのでした。

・イケメンリスク

原田龍二さんがやはり不倫スキャンダルで注目された時、私はバラエティ番組でご一緒させていただき、原田さんには「イケメンリスク」があることを説明しました。

カッコ良い芸能人であるというだけで、常に足を引っ張ってやろうというリスクが存在します。本来不倫は家族の問題であり、第三者には何の関係もありません。まして自分のファンでもない一般視聴者から文句を言われる筋合いすらないのです。

しかしイケメンリスクを持つ人がやらかせば、ここぞとばかりにフルボッコの批判が待っています。渡部さんは自らの意思で脱芸人化を図っているように見えました。美人アイドルだった佐々木希さんと結婚したことで、絵に描いたようなトロフィーワイフまで得た渡部さんは、グルメ王などのポジションも築き、文化人路線に行けそうに見えました。

原田龍二さんとご一緒した番組には、同じく不倫騒動があった千原せいじさんも出演されていました。なぜ原田さんは批判され、せいじさんはそこまで騒がれなかったのか。

せいじさんの人柄があったといえます。私は面と向かって「せいじさんてクズじゃないですか。だから怒られなかったんだと思います」と無礼なコメントをして、怒られました。(もちろん番組上の流れで、「オイ、お前!初対面で失礼だぞ!」と怒られるまでが構成だと理解しています)

せいじさんにはイケメンリスクがなかったのです。風貌だけを指すのではなく、生き方や姿勢がせいじさんは良くも悪くも人間的、素の自分をさらけ出す芸風なことが、リスクを下げたのです。

・どうすれば復帰が叶うかという戦略

2年前の年末、一度大晦日のダウンタウン番組で復活というウワサが流れました。続いて事件以来一切表に出てこなかった渡部さんが突如謝罪会見を開きました。ただひたすら自分の愚かさを反省し、お詫びをするだけの会見でした。

私は自著「謝罪の作法」でも、言い訳せずフルボッコになることは通過儀礼として必要であることを解説しています。反発のエネルギーをいち早くアースして逃がすことが目的で、細かい事情説明は不要だからです。しかしこの会見はただ袋だたきにあっただけで、反発エネルギーを逃がすことができませんでした。

結果として大晦日出演も出来なくなり、復帰はさらに遠のき、先日の千葉テレビまでえんえん伸びたのでした。

なぜフルボッコ会見をしたのに反発エネルギーが消せなかったのか、イケメンリスクを捨てなかったからです。多くの芸人さんなどが、元々コントに定評のあるコンビなのだから、まずはライブなどで細々と復帰をしていってはどうかというコメントを何度も見かけましたが、そうした地道な復帰を模索せず、国民的超高視聴率番組「大晦日の笑ってはいけない」で復活という、いかにも安易な道を選んだことが、地道さを嫌う、華々しい道を歩きたいというイケメンぶりを保持していると感じられたのだと思います。

・位置エネルギーの逃し方

自ら目指した文化人路線によって、結果としてイケメンリスクという位置エネルギーを上げてしまったのが渡部さんです。華々しい復活は、このリスクをアースで逃し、反発を十分消化できてからです。

魚市場でアルバイトという報道も出ました。それが見せかけ、ポーズと言われようと、なぜ魚市場を最低1年続けないのでしょうか。魚市場で働きながら、児島さんと一緒は無理でも一人でマイナーライブ出演をしないのでしょうか。

ヒマラヤなど高山に登る際は、気圧変動で高山病になることを恐れ、何度も上り下りで身体を慣らすそうです。位置エネルギー消化も同じです。一気に登ろうとすれば生命の危機も待っている高山病。それと戦う覚悟や戦略を持っているのでしょうか。

位置エネルギーを逃がすには一定の時間をかけることが欠かせません。「テレビに復帰」は安易で華々しく、魚市場や地下ライブのような地味な活動の逆です。1年で済むのか3年かかるのか、そうしたことも含めて環境や状況を見定めていく「復帰戦略」が全く見えていません。

フルボッコ会見含め、「何も考えていない人」という印象がつきました。もはやグルメや文化人に戻るのは無理なのではないでしょうか。