オバマは「くそ野郎」、国連総長は「ばか」 ドゥテルテが直面する3つの難問 蟹瀬誠一の「ニュースを笑え」2016年10月28日号

●馬鹿か利巧か

ときどき馬鹿なのか利巧なのか、にわかに分からない輩に出会って面食らうことがある。

「犯罪者と汚職官僚は皆殺しだ」

そんな過激な発言で熱狂的な支持を得て、今年6月にフィリピン大統領に就任したロドリゴ・ドゥテルテ(71)もそのひとりだ。

マスコミでは米共和党大統領候補ドナルド・トランプによく例えられるが、本人はトランプ嫌い。米人気犯罪映画の主役で有無を言わせず悪人を撃ち殺すはぐれ刑事「ダーティハリー」気取りである。

大統領に就任してからだけでも、麻薬犯罪撲滅作戦で殺害された人数は2000人超。大多数が摘発中の警察による“超法規的殺人”である。

そんな露骨な人権無視にも拘わらず、同氏はいまだに支持率9割という絶大な人気を保っている。背景に貧困、汚職、都市の交通渋滞、薬物中毒の氾濫、ギャングたちの悪行など、根深い社会問題があるからだ。

 それだけではない。有無を言わさず殺してしまう大統領の乱暴なやり方に、国民の間に恐怖感も広がっているのだ。その証拠に、先月首都マニラで”超法規的殺人“に抗議してろうそくを灯す集会が行われたが、全くと言っていいほど人が集まらなかった。それはそうだろう。明日は我が身かもしれないからだ。

●人気の理由

そんな見るからに無頼漢ドゥテルテがなぜ大統領になれたのか。その理由のひとつはフィリピンの地理にある。

なにしろ7100余りの島からなる多島国家である。国民の平均的教育レベルはまだまだ低く、知名度の高い「スーパースター」が支持を集めやすい傾向があるのだ。私も戒厳令前夜のマルコス独裁政権下で一年過ごし、その後何度も同国を訪れているのでその感覚がよくわかる。

人々はスターに熱狂するのだ。

1998年に大統領に就任した映画俳優ジョセフ・エストラーダもその典型だった。しばらくして不正蓄財がばれて議会から弾劾されたが、2013年には捲土重来とばかりにマニラ市長選挙に出馬して当選してしまっているから人気というのは怖い。

ドゥテルテはレイテ島で…

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