異例な安倍長期政権のわけ

安倍政権が発足してから5年が過ぎた。歴代政権の中では、74ヵ月目に突入し、戦後二番目の長さだ。日本の政権はくるくる変わり、一つの政権が70ヵ月を越したのは極めて珍しく戦後では佐藤栄作首相の2798日に次いで2番目、異例の長期政権といえる。第一次安倍政権は体調不良で、わずか366日で身を引いているだけにこれほど長期になるとは驚きだ。

第二次安倍政権が誕生したのは、ひとえに菅義偉氏の巧みな根回しによるところが大きかった。菅氏が安倍氏を御輿として担ぎ、政権の座にいた民主党が落ち着いた安定的な政治を出来なかったため、再び安倍氏に出番が廻ってきたのだ。

結果的には1993年に野党勢力だった細川護煕連立内閣、1年後の1994年に自民・社会・さきがけの自・社・さ 村山富一(社会)連立内閣が成立したが、結局長続きしなかった。自民党はその後、公明党と組んで再び1996年から橋本龍太郎、小渕恵三(1998年)、森喜朗(2000年)、小泉純一郎(2001年)、安倍晋三(2006年)などと自民党政権に逆戻りすることに成功していったのである。2009年から2012年まで民主党が政権をとるものの、第二次安倍政権になると公明党と組んで安定多数を確保し、アメリカのトランプ政権と親密さを演出することで外交的な安定感も得て長期政権の基盤作りに成功した。

ただ景気拡大の期間は長かったがかつての「岩戸景気」「オリンピック景気」「列島改造景気」などの6-7%成長と比べると1%前後で景気拡大の実感に乏しいのも事実だ。

しかし、このだらだらと低成長で長く続いている“アベノミクス景気”が安倍政権を長持ちさせているともみえる。民主党政権の失敗はまだ記憶から消えていないし、自民党内にも5年間続いた安倍政権を倒すエネルギーがほとんどみえてこない。対抗馬とされる石破茂氏には国民を沸かす人気やエネルギーが感じられないし、宮澤派の岸田文雄氏も自ら立ち上がって政権を取りに行くガッツがみられない。そうそうしているうちに安倍氏は海外で顔を売り、すっかり日本の代表としての存在感をみせてきてしまった。拉致問題、北方領土交渉、対中国関係も遅々として進んでいないが、日本の中では誰がやってもそう変わらないだろうという諦念が当たり前のようになっているし、他の候補も野党もこれっ!といったアイデアも行動もみせないため、安倍氏でいいんじゃないかという雰囲気に落ち込んでしまっている状況のようである。誰かが「なるほどそんな手を打ってみたら面白い」と思うようなアイデア、行動が出てくれば、今の沈滞した政治状況は変わると思うが、どこにもアイデアや構想力、行動が出てきていない。

そんな状況だから、政治家はもちろん企業や国民の中からも胸のすくような提案は出ず、平々凡々たる安倍政治にまかせておいた方が安心だという雰囲気に取り囲まれているのではないか。世界をみても、どの国の政治にも新風は吹いておらず、日本もその渦の中に飲み込まれ、国民も「仕方なし」とあきらめているようにみえて仕方がない。

「三・角・大・福・中」時代や「安・竹・宮」の頃のほうがそのうち何かが起こるのではないかという“期待”感があったような気がする。政治が“小粒”になってきたということなのだろうか。いまや外交は安倍、国内の政治の操縦は菅官房長官が一手に引き受けて政局は一見、安定しているようにみえるが、実際は国民の政治的関心が薄れてきてしまっているだけではないのか。

【Japan In-depth 2019年3月16日】

◆お知らせ

・昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』

 ゲスト:青野由利氏(毎日新聞社論説室専門編集委員)二夜目

 以前に比べて増えつつある科学記事についてや、科学に関する認識の変化。科学記事を書くときに心がけていること、日本の科学力などにつきお伺いしました。番組サイトにて来週水曜正午までの期間限定で放送音源をお聞きいただけます。

 前回の子どもの頃から科学が好きで理系大学を卒業後、新聞記者になった意外な理由や、記者の仕事について、最近の科学界について感じることなどにつきお伺いした放送音源は番組サイトにて今週水曜正午までお聞きいただけます。前回は、日本の科学界の研究費の投じられ方やノーベル賞に関する話などもお話いただきました。次回は、料理研究家の鈴木登紀子氏をお迎えする予定です。

 https://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201903181

・平和展示祈念資料館「春休みイベント 戦争のお話にふれてみよう。」が今月末まで開催

 戦争が終わっても、なお辛く、苦しい体験をした人たちがいることを知っていただく事を目的に、語り部の方のお話や貴重な映画の上映などのイベントとなっております。入場無料ですので、ぜひ足を運んで頂けると幸いです。

 https://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20190318

・ウズベキスタン協会設立20周年旅行開催 ~中央アジアの美しさを実感し、地球環境問題を考える旅に~

 会長を務める日本ウズベキスタン協会設立20周年を記念した、ウズベキスタンへのツアー参加者を募集中です。

 一般のツアーではなかなか行かないアラル海など、協会ならではの旅行企画となっておりますので多くの方のご参加をお待ちしております。

 日程:2019年9月6日(金)~13日(金)

 訪問地:タシケント、ヌクス、アラル海、ヒヴァ、イチャンカラ遺跡等

 費用:228,000円~245,000円 (2名1室ご利用の場合の1名様あたり)

   ※航空券/ホテル6泊/専用車/朝食6回、昼食6回、ディナー7回を含みます

   ※燃油サーチャージ、空港使用税別

 募集人数:30名(先着)一次申込受付期限は2019年7月5日(金)

 詳細は以下を参照下さい。

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