プロレスというリアリティショーが「やらせ」を認めたワケ

リアリティショー出演者へのしつような嫌がらせ、中傷投稿を媒介したSNSが大きな批判を浴びています。一方、リアリティショーはリアルなのか?という制作側にも批判は及んでします。リアリティを考えるため、プロレスが八百長かどうか、年間売上900億円を超える世界最大のプロレス団体・WWEはすでに答を出しています。

・「プロレスはショーである」

小学2年生のころからプロレスを見ていた私ですが、昔から「ヤオガチ論争」というものがありました。要はプロレスが本気か八百長かということです。そんな、プロレスなんてインチキなんでしょ?という言葉をさんざん浴びせられるプロレスファンは「プロレスこそ最強」という主張で孤軍奮闘しつつも、世間からは冷めた目で見られていたといえるでしょう。

今、世界最大のプロレス団体・WWEはNYSE上場企業ですし、日本でも新日本プロレスは年間売上50億円を超え、大躍進を遂げています。しかしそれでもまだ野球やサッカーといったメジャーの中のメジャースポーツと比べて、一抹のいかがわしさがあるのではないでしょうか。プロレス好きをカミングアウト(犯罪か!?)すればけっこうな確率で「プロレスって八百長/ショー/インチキでしょ?」と言われるのは今でもけっこうあるようです。

でも、実はヤオガチ論争に、グローバル環境では答は出ています。世界最大のプロレス団体・WWEがエンターテイメントであることを認めているからです。だって名前で「ワールド・レスリング・”エンタテイメント”」って言っちゃってますもの。

・リアルガチ?

それじゃ出川哲朗さんですが、ヤオガチ論争とは、プロレスに筋書きがあるのか、本気で戦っているのかという昔からある問題です。当時子供だった私は、意味がわかりませんでした。なぜって、筋や脚本があるというなら映画やテレビドラマは全部八百長です。しかし私は映画もテレビも、しかも何度も見ている作品でも、感動して泣いたりします。「映画って八百長ですよね」という話は聞いたことがありません。

元はあのアントニオ猪木氏が創立した新日本プロレスですが、現在はブシロードという大手上場ゲーム会社傘下で経営されています。当然のことながら上場企業グループの一員として、さまざまな経営の健全性担保がなされています。猪木氏に限らずかつてのレスラー上がりの社長によるドンブリ経営、地方では地元興行主との関係、その他不明朗な経営体制でプロレス団体が成り立っていた時代とは別物と考えて良いでしょう。

アントニオ猪木は「プロレスは最強」とずっと言ってきました。実際それを信じていたプロレスファンはたくさんいたと思います。猪木と戦ったラッシャー木村さんには、猪木ファンからの脅迫状や家への嫌がらせ行為があったそうです。「真剣勝負」と言われたら素直にそれを信じてしまう層は、昔からいたのです。

WWEは株式上場に際して、プロレスをスポーツではないと名言しました。これはエンターテイメント業と位置することで税務上スポーツ業より有利になったからです。プロレスに筋書きがあるというカミングアウトは、ビジネス上のメリットとなったのです。プロレスがヤオかガチはこれで決着は着いたはずですが、WWEはさらに成長を遂げています。

・リアリティショーを信じてしまう層への責任

真剣勝負ではない、筋書きがあるものであっても、おもしろければ評価され、エンターテイメントとしてばく大な収益を上げられているのです。さすがに墓場から蘇った暗黒魔王、ジ・アンダーテイカーが本当に魔法を使っていると信じる視聴者はほぼいないでしょう。

しかしプロレスのストーリーラインは、地獄の墓掘り人とか赤い処刑マシーンというような、子供だましのギミックだけではありません。権力闘争あり、不倫あり、ポリティカリィコレクトネスやら上司へのゴマすり、ライバルへのジェラシーといった、映画さながらの「リアリティ」を演じることで、大人が楽しめるエンターテイメントとなったのです。

フジテレビの遠藤社長は番組の演出について制作上の問題点と検証について「批判は番組を制作・放送・配信していた我々が受けるべき」と語りました。WWEがプロレスがエンターテイメントであることを説明したのは当然レスラーではなく経営陣です。フジ社長のこの姿勢は正しいものと考えます。

番組上の演出であることを視聴者自身で気付けではなく、会社側がしっかり説明することは避けられないでしょう。番組制作上、視聴率を稼ぐため演出として、人間関係トラブルやイヤミな行動、それらをクローズアップするナレーションやBGMといった演出が行われていたことは、出演者ではなく制作側の説明責任だと思います。「台本無し」と宣言する手法含め、経営陣と制作者には、結果責任があると思います。