◆いま、日本が新たに北朝鮮の拉致被害にあった場合、どうなるのか？
憲法改正が議論されていますが、「日本人は議論ができないのではないか？」と疑われるほど、知識人を含めて「肝心な点」の議論を避けているので、いつまでも対立点が煮詰まりません。憲法改正は主として憲法９条、つまり「憲法９条は自衛権を否定しているのか？」につきます。そして、この問題は私たちの子供の時代まで大きな影響を受けるでしょう。
そこでここでは「近い将来、また北朝鮮による日本国民の、日本国土からの拉致が起こるとして、それを防ぐことができるか」の一点に絞って、具体的に考えてみたいと思います。防衛問題は「そんなこと起こるの？」という反論がすぐ出ますが、北朝鮮による日本人の拉致というのは現実に起こったことですし、現在の日本と北朝鮮の関係から言って、敵対的ですから起こる可能性があります。だから再度、北朝鮮の拉致が起こる可能性は誰も否定しないでしょう。
●過去に拉致が起こった時に、それを防ぐことができなかった理由
１）拉致が起きた時、日本の公安、警察、日本海側の海岸の住民などは、海岸付近から人が消えることを知っていて、おそらく外国船による拉致の可能性が高いことを知っていた。
２）海上保安庁は人数が足りないことを理由にし、警察は外国が関与するから職務外とし、自衛隊は政治家が決断せず、出動しなかった。
３）海上保安庁、警察、自衛隊のいずれも外国が関与する重大問題に出動するには、大臣などの「政府高官（文官）」の指示が必要だったが、政治家も官僚も日本社会からのバッシングを恐れて、命令を躊躇した。
４）当時の自民党の一部政治家も含め、社会党などは北朝鮮がそんなことをするはずはないとの見解で、朝日新聞などのメディアも拉致を言ったら、日本人を守るような人をバッシングしようと手ぐすねを引いていた。
５）日本社会は個人の拉致ぐらいで、自衛隊が出動して国際紛争になるのを好まなかった。
ところで問題は、過去のことだけではなく、これから類似のことが起きた時に、「自衛隊が自衛のために出動できるか」ということです。たとえば朝鮮半島で騒動が起こり（南北統一など）、大量の「武装難民」が日本の沿岸に押し寄せた時に、どうするか、です。今までの日本社会では自衛隊がいても出動させませんから、かなりひどい状態になるでしょう。