憲法改正と自衛権それに国際的な集団的軍事行動~武田邦彦集中講座 今の話題を深く考える(4)

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◆毎年5兆円を費やし60年以上任務を果たす自衛隊が「日陰者」の異常さ

安倍政権の間に、確実に憲法改正案が出て国民投票が行われ、憲法に関する論議が深まると期待していました。著者は憲法改正の必要はないという考えですが、国の最も重要な憲法について「議論すらしない」という状態は好ましくありませんし、60年以上も任務を果たし、税金を毎年5兆円も使っている自衛隊が日陰者で、制服を着て街を歩けないというのは異常です。まずはそこから正常にしないと他のことも「まあまあ、なあなあ」になってしまうと思うからです。

日本人のご都合主義も悪い面だけではないのですが、これほど極端になるとやはり弊害が出ると思います。

まず自衛隊ですが、これはすでに1957年12月16日の砂川事件最高裁判決で「憲法は自衛権を制限しているものではなく、国際的な集団的自衛権の行使は政治の判断である」としています。私たちが中学校で習ったように「最高裁判所は憲法の番人」であり、著者は日本社会が法律に基づいて運営されることを希望しています(法治主義)ので、自分の考えはどうであれ、現在の平和憲法は日本の自衛権は制限していないので自衛隊は合憲とするべきと思います。

また、法律というのは著しく社会慣習と違うのは許されないという点からいっても、すでに60年以上(警察予備隊1950年、自衛隊1954年)、国の税金を使って自衛隊を維持していて、砂川事件以外に「自衛隊は違憲である」という訴訟がないのですから、日本社会も「自衛隊は憲法違反ではない」と考えているのでしょう。

ところが、砂川判決から61年もたっても自衛隊や集団的自衛権(この問題が憲法の問題ではなく、政治の問題であるということも砂川判決で述べられている)が問題になるのは、「最高裁は憲法の番人だ」と国民に教えている法学者や弁護士会だから厄介です。

裁判などのことにかかわる人を「法曹関係者」と言いますが、法曹関係者が二枚舌を使っています。教科書に書く時には、

1)最高裁は憲法の番人(ということは自衛隊や集団的自衛権は合憲)であること

2)国民は憲法を尊重しなければならないこと

3)もし新しい問題がでれば裁判で決めていくこと(法治主義)

としながら、実態は1)自分が砂川判決に反対、2)それでいて61年間新しい裁判を起こさない、という矛盾したことをしているからです。それを左翼系野党が政治的理由で支持しているから余計に厄介です。

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