二日酔いで遅刻するようでは、ビジネスマン失格。

若い時は、人生にはいくらでも時間があると思っていました。

ところが、年を重ねてくると、時間の少なさに愕然とします。人生が80年あるとして、一生はたったの3万日程度。1日に8時間眠っている人の場合、活動しているのは約2万日ということになります。時間にして約48万時間。平均的な人で、それだけしか時間がありません。人生の時間は驚くほど限られています。

人が一度失ったら元に戻すことのできないものは、「命」と「時間」です。

だから、命と同じように時間を大切にしなくてはなりません。自分の時間はもちろん、他人の時間も無駄にしてはいけないのです。

そのために、人との約束の時間は必ず守ること。人との約束の時間に遅れるのは、相手の時間を無駄にすることと同じです。つまり、相手の有限の時間を奪うことであり、もっといえば、相手の命を削り取ってしまうのと同じです。

自分で自分の時間を無駄にした場合は、仕方がないとあきらめられるでしょう。でも、相手のなくした時間を弁償することはできません。

だから、1秒でも、1分でも、遅れてはいけません。

世の中のルールは、すべて時間で動いています。会社の仕事はすべて時間で管理されていると言っていいでしょう。

自分が少しくらい遅れても大勢に影響はないだろうと、考える人もいるかもしれません。ですが、どんな仕事も会社では影響し合っていますので、スケジュール通りに進めないと仕事に滞りができてしまい、迷惑をかけることになります。

10人が出席する会議に、自分ひとりが5分遅れたとすると、9人×5分で45分もの人の時間を奪うことになります。

アイスの製造に関していえば、9月に発売するアイスがあれば、長い時はその数年前から企画を立て、材料を仕入れたり、工場のレーンを確保したり、梱こん包ぽう材を決めたりします。どこか一か所でも滞れば、社内はもちろん、アイスを置いてくださるお店や、発売を楽しみにしてくれているお客様にも迷惑がかかります。その数は計り知れません。

他人の時間に対してルーズな人は、人が離れてしまい、多くの場合、仕事がうまくいきません。1990年頃、私はよく取引先を回って商品の提案をしていました。いわゆる商談です。商談に行くと、よく待たされました。いちばん待たされたのは6時間ほど。

ある取引先の役付きの方に「朝9時に会うから来てください」と言われ、伺ったところ、ずっと待たされて、お会いできたのは午後3時を回った頃だったのです。

この役付きの方はいつのまにか業界からいなくなってしまいました。時間にルーズなことが原因かどうかはわかりませんが、私は大きな原因のひとつだと思っています。

会社に入ると、販売する部署、つまり「売る側」がある一方で、何かを仕入れたりする「買う側」の部署もあります。「買う側」の部署になると、人はつい勘違いしてしまい、「買ってやるんだから」といばってしまう傾向があります。だから、取引会社に対して、高圧的になって、待たせてもいいという態度になってしまうのです。

でも、これは大きな間違いです。買う側も売る側もフィフティ、フィフティです。

赤城乳業でいえば、たとえば、ダンボールの会社と取引があります。『ガリガリ君』を入れるダンボールを作ってくれています。ダンボールひとつを作るにも高い技術が必要で、赤城乳業にその技術はありません。ダンボールがなければ、運べませんから、『ガリガリ君』を売ることはできないのです。

自分のところにない技術を持っている会社を敬い、大切にしなければビジネスは成り立ちません。その打ち合わせに遅れたりするのは、もってのほかだと思います。

こちらが相手を敬うと、相手にもこちらの気持ちが伝わり、ダンボールの会社は、『ガリガリ君』のための最良のダンボールを作ってくれるようになります。

最近はGoogleマップや簡易カーナビなど、地図やナビ系アプリが充実し、非常に便利になりました。行く先までの最短ルートや所要時間が出るので重宝しています。

細かく時間を教えてくれるので、所要時間「1時間」の場合、1時間前に出てしまう人がいます。ですが、おすすめできません。いくら地図やナビ機能が発達しようとも、車の渋滞や電車の遅延は、昔と変わらずにありますし、渋滞解消や通常運行するまでにどれだけの時間がかかるか、読むのはなかなか難しいものです。

ですから、「時間に余裕をもって出る」のが基本です。私は、今、講演を行っていますが、遅刻すると、大変多くの人の時間を奪うことになってしまいますので、かなり余裕をもって家を出るようにしています。

仕事のできる人は、だいたい誰よりも早く待ち合わせ場所にきていて、遅れることはほとんどありません。

万一、遅れる場合には、早めに連絡を入れることです。早めに連絡を入れておけば、相手も、「1時間あるから、ほかの仕事をやってしまおう」など、時間を有効に使うことができます。社会人であるならば、

「アポイントメントがある時は余裕をもって出る」

「万一、遅れる場合は早めに相手に連絡をする」

を徹底しましょう。

会社の遅刻や無断欠勤も、決してしてはいけないことです。会社でときどき見かけるのは会社の飲み会や、社員同士の飲み会で深酒をし、二日酔いになって翌日会社に遅刻するケースです。これはだらしがない。

私もよく午前3時くらいまで飲んでいましたが、必ず、出社時間の8時には会社に行きました。前社長もそうでした。一緒に夜中まで飲んでも、出社時間のかなり前に席についていました。前夜一緒に飲んでいて、翌日二日酔いで遅刻するような社員がいると、本気で怒っていました。

時間だけでなく、約束を守ることも大切です。

契約を交わしたら契約を遂行する。「100本納品すると言ったら、必ず納品する」。守れなければ、注文が来なくなってしまいます。

守れない約束ならば、最初からしないことです。

守れない約束をしてしまうのは、お酒の席です。

酔いが回った勢いで、調子のいいことを言って、守れない口約束をしてしまいます。

私もお酒が好きですし、取引相手とお酒の席をご一緒する機会があります。そういう席では趣味の話になりがちで「今度、ゴルフに行こう」という話が持ち上がります。

私はお酒の席での約束は、忘れないようにメモを取ることにしています。自分は必ず、覚えておきます。「どんな約束でも守りたい」と思うからです。

ただし、相手が忘れた場合は、責めたりしません。

「この間、こうおっしゃっていましたけれど、どうしますか?」と軽く確認して、「えっ、そんなこと言ったっけ、覚えていないな」と言われたら、「じゃあ、キャンセルしておきますね」と言って済ませます。お酒の席でのことで、いちいち角を突き合わせていると、仕事は決してうまくはいきませんから。

約束は、自分が思っている以上に、相手が期待している場合もあります。

「今度、おごるよ」と言われたら、「いつおごってくれるんだろう」と期待するでしょうし、「今度、お前を課長にしてやる」と部下に言ったのなら、自分が言った10倍以上に期待している可能性があります。言った以上は、果たしてあげないといけません。

時間や約束を守るのは、社会人としての基本中の基本です。

「基本は徹底して守る」こと。

基本が崩れると、組織としての力も、弱くなってしまいます。会社に勤めるということは、組織の一員となることであり、組織の力にならなければ、意味がありません。逆にしっかりと基本が守れることで、社員としての評価も高まるのです。基本はしっかりと守るようにしましょう。