若いうちから夢を持ち、未来予想図を描くと、夢が叶いやすくなります。メジャーリーガーのイチロー選手も、サッカーの本田圭佑選手も、ゴルフの石川遼選手も、みな子どもの頃からプロになる夢を持ち、卒業文集などに未来を描き、実現しています。
ヨーロッパでは、次のような有名な話があるようです。
彫刻家になる夢を抱いて仕事に打ち込んでいる石工は彫刻家になる。同じ仕事をしていても、ただお金をもらうために働いている石工は、いつまでも時給で働く石工のままである。石工という仕事が悪いと言っているわけではなく、夢を持つのと、持たないのとでは、将来が変わってくる、というたとえです。
夢を持つことは、とても大切です。
しかしながら、夢を持てない、未来予想図を描けないという人もたくさんいるでしょう。あるいは、夢破れ、挫折してしまったという人も少なくないと思います。
実は、私も若い頃は、「夢破れ」派でした。
私が高校生の頃、今ほど豊かな時代ではなく、食料も決して豊富とはいえませんでした。だから、日本人が未来永劫、ちゃんと食べていけるように、魚の養殖技術を勉強しようと思いました。しかし、目指す水産系の大学には入れずに、あえなく挫折。結局、父親の卒業した大学に入って、農芸化学を勉強することにしました。
当時は目的を失いましたが、人生を歩くうちにさまざまな目的が見つかり、それなりにやりがいを感じるようになりました。
アイスの開発に携わっていた頃は、「自分の子どもが食べても安心なアイスを作る」という目標ができ、食品添加物をできるだけ使わない商品作りに挑みました。
少し前のことになりますが、休日になるとよく住まいの最寄り駅までいき、目的地も決めずに、いちばん最初に来た電車に乗ってワンデイトリップを楽しんでいたことがあります。
車窓に映る景色に惹かれたら、気ままに下車して、散歩して、また気ままな電車に乗って好きなところへ行く……。目的地を決めない旅は、着いたところが目的地。新しい発見の連続で、非常にワクワクしたものです。
人生も同じかもしれません。
もし、目指していた大学に入っていたら(目的の電車に乗っていたら)、寄り道もせずに、養殖の研究にまっしぐらに進んでいたことでしょう。けれど、目的の電車には乗りそびれ、目の前に止まってドアを開けてくれた電車に飛び乗った。そして、目的地がないなりに、歩み、たどり着いた赤城乳業で大きな目的を見つけた。
ある意味、自由にやってこられたといえます。
夢が持てないからと、焦る必要はなく、今、夢がないなら、あとで見つければいいのです。
世の中も変化していきますので、目的を設定していても、変わってしまう場合があります。アメリカのニュース専門放送局CNNのサイトによれば、将来ロボットに取って代わられそうな職業のひとつに弁護士や記者が挙げられています。
弁護士や記者は一般にあこがれの職業だと思いますが、せっかく目標を持って目指しても、将来、どうなるかわからないという点もあるのです。
AI(人工知能)の研究者マイケル・A・オズボーン准教授らの論文によると、米国の総雇用者の仕事のうち、47%が、10〜20年後には機械によって代わられるという驚くべき予測も出ています。
予測ですから、どの程度当たるかはわかりませんが、ただ、いくつかの職業が、AIに代わられることだけは確実でしょう。
避けるべきは、どうしたらいいかわからないからと、じっと立ち止まり、悩み続けてしまうこと。少しくらいは悩んでもいいですが、立ち止まっても解決にはならない。パッパッと行動に移したほうが道は開かれていきます。
今は選択肢が広がっている時代です。
仕事も種類が多いですし、レストランで食事をしようと思えば、世界各国の料理があるし、店も多い。テレビのチャンネルもたくさんあります。インターネットの普及で、情報もあふれています。
悩んでいるばかりでは、貴重な人生の時間がどんどん失われていきます。だから、とりあえず、目の前の電車に乗ってみる、という選択があってもいいと思います。
目標を決めると行動範囲がある程度限定されます。すると、限られたものしか見えませんし、その枠の中だけで行動してしまおうとしがちです。
でも、枠からはずれることで、新たな発見もあります。
赤城乳業では、本流からはずれ、少し「はずす」ことでオリジナリティを生み出しています。当初の『ガリガリ君』のキャラクターは、イガグリ頭と大きな口がトレードマークで、一般受けするキャラクターとはほど遠いものでした。
でも、あえて、「はずす」ことを狙っています。はずれているから、目立って注目されたりするのです。
たとえ今は目標がなくても、あせらず、ゆったりと構えていきましょう。必ず、夢は見つかるものです。