国会議員秘書の国税呼び出し事件」「実はかなり使える医療費控除」『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

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●国会議員秘書の国税呼び出し事件

最近、気になるニュースがありました。

まずは、次の記事をご覧ください。

読売新聞配信

「鳩山氏秘書、国税呼び出し…税務調査の説明要求」

外国人観光客への宝石の架空販売で約2億2000万円の不正な消費税の還付申告をした疑いで東京国税局から還付を保留されていた免税店運営会社4社を巡り、鳩山二郎衆院議員(39)(自民・福岡6区)の小沢洋介秘書(45)が昨年4月、国税庁幹部を議員会館に呼び出し、還付保留について説明を求めていたことがわかった。

秘書は当時、4社の架空仕入れ先と認定された宝石販売会社の顧問を務め、説明の場には議員本人も同席していた。

 個別の税務調査について国会議員側が国税庁に説明を求めるのは極めて異例。国税関係者は、与党議員の秘書であることを背景にした国税側への圧力にほかならないと指摘している。

 国税関係者によると、4社は2015年4月〜16年12月、小沢秘書が顧問だった宝石販売会社「国際東日ジュエリー」(東京)から仕入れた宝石を外国人観光客に販売したとして、仕入れ時に負担した消費税約2億2000万円の還付を申告。国際東日は、東京都内の宝石卸売会社を通じて札幌市の建設会社から宝石を仕入れたことになっていた。

2018年1月9日配信~記事ここまで~

解説

この事件の背景について説明しますね。

消費税というのは、国内で消費されるものを買った時にだけ課せられる税金です。だから、外国人が自分の国に持って帰る、もしくは他の国に持っていくことを目的に物を買った場合、消費税は免税になるのです。そして、消費税を免税にするためには、免税手続きができる店で買い物をしなくてはなりません。この免税手続きが出来る店のことを、一般に「免税店」と呼ばれているわけです。免税店では、パスポートや航空チケットなどを確認し、国外に持ち出すということが明らかな場合のみ、免税の手続きをします。

ですが、この免税店は、商品を仕入れたときに仕入れ業者に対して消費税を払っています。免税店といえども、すべての商品が免税になるとは限りません。というより、免税になるのは、免税手続きを行なった一部の商品のみです。だから、原則として、普通の商品には消費税がかかるものとして、仕入れ時にも消費税を払って仕入れているのです。

通常、消費税を払って仕入れた消費税は、販売時に受け取った消費税で、差し引くことができるので、販売業者に損は出ないようになっています。が、商品を免税品として売った場合、仕入れ時に払った消費税は回収できないので、販売店の丸損ということになります。だから、免税品を販売した場合、それを仕入れたときに支払った消費税は、税務署から還付されることになっているのです。が、この免税品の消費税還付制度を悪用する悪い人たちもたくさんいるのです。

本当は免税品として売ったわけではないのに、免税品として売ったように見せかけて、消費税を不正に還付するのです。それを防ぐために、国税の方は、免税品としての販売を証明するために、様々な書類の提出を義務付けています。

この事件の販売店は、その書類などになんらかの不備か、不審な点があったものと思われます。そのため、国税当局は、税金還付を保留していたのです。

単なる書類不備であれば、それほど大きな問題ではありませんが、もし本当は免税品ではないのに免税品と見せかけて、還付金をもらおうとしたならば、これは「脱税」というようなレベルの犯罪ではありません。「還付金詐欺」ということになります。国からお金を騙し取ろうとしているわけですから、税金を逃れる事よりも、もう一段重い罪になるのです。

そして、この事件では、鳩山二郎衆院議員の秘書が、国税を呼びつけたということです。国会議員の秘書などが、税務調査に関与してくることは、実はたびたびありました。国会議員の秘書が、税務調査で困っている地元の支持者などから頼まれるのです。この事件の場合、秘書が当事者である宝石販売店の顧問をしていたということなので、より結びつきが強いわけです。

こういう場合、国税はどういう対応をするのか?というと、今回のように国税側が反発し、マスコミにリークするようなこともあります。が、必ずしもそうでないときもあります。本当に強い政治家が絡んできたときなどは、「忖度」することもなきにしもあらずなのです。鳩山二郎衆議院議員は、お父ちゃんの跡を継いだばかりのおぼっちゃん世襲議員であり、政治的な権力はまだあまり持っていません。意地悪な言いかたをすれば、だから国税は突っぱねることができた、ともいえるのです。

安倍首相クラスが絡んで来れば、絶対にこのようなことはないのです。

なにしろ、現在の国税庁の長官は、安倍首相に忖度することで出世した人なのですから。

●実はかなり使える“医療費控除”

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