”第3のビール”をめぐる攻防/こども保険に騙されるな! 『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』



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●「第3のビール」って何?ビールメーカーと国税の攻防

昨今、「第3ビール」ということが時々、話題になります。

ビールメーカーが第3のビールを発売しました、とか、時々メディアで宣伝されますよね?

少し前には、ビールとほぼ同じような味がするけれど、価格が安い発泡酒というものが出回り始めました。その後、それよりもさらに安いという第3のビールが話題になってきたわけです。

が、第3のビールって一体なんなのと思う人も多いでしょう。

そもそも、なんで、ビールとか発泡酒とか、同じような味なのにたくさん種類があって、値段が変わってきたりするのか、一般の人にはなかなかわかりにくいですよね?

今回は、そのわかりにくい、ビールや発泡酒の値段のことについてお話したいと思います。

まず、以下の新聞記事を読んでみてください。

サッポロビールが国を提訴 『極ゼロ』は「第3のビール」、自主納付分「返して」(産経新聞2017年4月11日配信)

 サッポロビールは11日、税率の低い第3のビールから、国税庁の指摘を受け発泡酒に変更した「極ゼロ」に関して、自主納付した酒税115億円の返還を求め、国を相手取り東京地裁に提訴したと発表した。

 サッポロは極ゼロを平成25年6月に第3のビールとして発売。だが、国税庁の指摘を受けたことで、26年7月に製法を見直し発泡酒として再発売した。

 サッポロは旧商品を販売していた期間の酒税を自主納付したが、その後、「第3のビールに該当する」と結論付け、27年に判断の見直しを求める更正請求をした。だが、国税当局はこれを棄却。サッポロは請求を退けたことを不服とし、取り消しを求め提訴した。

 ビール類の酒税は3段階に分かれており、ビールの税額は350ミリリットルあたり77円、発泡酒は46.99円、第3のビールは28円。ただ、複雑で分かりにくいことなどから、38年までに段階的に税率が統一されることが決まっている。

この記事も、まあ、わかりにくいですね~

で、ざっくり言いますと、ビールというのは、非常に税率が高い飲み物なのです。

ビール350mlの値段はだいたい220円ですが、そのうち77円が酒税なのです。酒税分を除いた350mlのビールの値段は140円程度です。つまり、ビールには50%以上の超高率の税金が課されているわけです。

こうしてみると、本来ビールは、コーヒーよりも安いですよね?

にもかかわらず、酒税があるので、220円も払わされているわけです。

で、ビールメーカーとしては、なんとかしてこの酒税を引き下げたいと思っているわけです。価格が安い方が、たくさん売れますからね。

そして、こんな高い税率が課されているのは、お酒の中でもビールだけなのです。

そのため、ビールメーカーは、ビールの税率がかからないような、税率の安いビールもどきをつくろうとしてきたわけです。

高い税率がかかるビールというのは、製法上の定義が細かく定められています。簡単に言えば、麦芽比率が50%以上になると、高い「ビール税」がかかるのです。

しかし、麦芽比率が25%未満の場合は、「発泡酒」という扱いになり350mlあたり税金は28円で済みます。そこで、ビールメーカーは、こぞって発泡酒をつくるようになったわけです。

さらに、麦芽の比率などを減らすことで、「その他の発泡酒」という扱いになれば、350mlあたり28円になるのです。この「その他の発泡酒」というのが、第3のビールというわけです。

ところが「発泡酒」か「その他の発泡酒」か、というのは、製造方法の線引きが微妙で、どちらとも取れるようにもなっているのです。

国税としては、多く税金を取りたいため厳しく判断し、ビールメーカーとしてはなるべく税金を払いたくないため緩く判断します。

それが、サッポロビールの提訴事件の背景なのです。

ところで、なぜこんなにビールの税金が高いのか、不思議に思われませんか?

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