逃げ切り作戦は無理筋。元ヤンとしての度胸を見せるしかない木下優樹菜

タレントの木下優樹菜さんと夫である藤本敏史(フジモン)さんが離婚を発表しました。

タピオカ店への恫喝が激しい批判を呼び、芸能活動休止としていた中、大晦日という、マスコミも対応が難しい日程での発表でした。これまでも謝罪会見などをひたすら避け、自らのインスタや所属事務所以外での発信を拒絶していた木下優樹菜さん。「逃げ切り作戦」が第二フェーズに入ったといえます。

・徹底した謝罪拒絶

日々起こっているさまざまなスキャンダルや不祥事はもはや日常光景です。そうしたダメージを回復できず、中にはそのまま存在をフェードアウトしてしまう人もいます。スキャンダルの中身によっては、芸能界などマス露出の場を失う人もいる一方、巧みなダメージコントロールにより、その立場を軽傷で維持できる人もいます。

わかりやすい失敗例はベッキーさんのセンテンススプリング事件。清純派・元気で明るいイメージを損なうことを恐れ、結局うやむやの内に何となく芸能界に復帰となったものの、全盛期とはくらぶべくもない露出に留まっています。一方謝罪会見のお手本とも呼ばれる三遊亭円楽さんなど、巧みな謝罪の成功により、元の地位を継続できている人もいます。明らかに成功例といえます。

木下優樹菜さんは激しい批判を呼んだタピオカ店とのトラブルの際、徹底した沈黙を貫き、風の収まるのを待ちました。マスコミは当初事件を伝えませんでしたが、ネット中心に批判は止むことなく、そんな中、木下さんが久々にテレビ出演した番組が感動をあおる内容だったことから、批判はさらにヒートアップしました。インスタなどで謝罪と芸能活動自粛を宣言したものの、問題となった恫喝メールとは言葉遣いもトーンも全く異なる事務的・模範的な言葉遣いなことが、本人ではなく弁護士などによるものと受け取られ、これまた批判は燃え上がりました。

・たけし事件(フライデー殴り込み事件)

もはや当時を覚えている人も少ないかと思いますが、昭和末期、バブル華やかな1986年12月に起こった、ビートたけしさんとたけし軍団によるフライデー襲撃事件という衝撃を、私は今でも忘れられません。人気絶頂のバラエティの王者が暴行事件の刑法犯となる前代未聞の大事件でした。逮捕され、後に執行猶予付き有罪判決が確定したビートたけしさんですが、その時間から30年以上たった今現在も、バラエティ番組の帝王の座に居続けるという、信じられない存在となっています。

たけしさんはフライデー事件後、マスコミ向け記者会見を開きましたが、そこで出たのは謝罪ではなく自己正当化であり強引なフライデー・写真週刊誌批判でした。「世間に対して迷惑をかけた」「子供のファンに説明できない」というマスコミからの批判に対し、真っ向からこれらを否定。

特に「すべてちゃんと説明してわからないなら、その子供がバカなんだ」と「世間」そのものを全否定する発言をしました。結果、マスコミ中心にたけしさんへの反発はさらに燃え上がった一方、たけしさんの発言への賛同は決して少なくありませんでした。マスコミ側は基本的に全否定一辺倒の報道でしたが、一般人のコメントや投書はマスコミへの批判が多く、写真週刊誌批判、マスコミ批判と相まって、賛否は拮抗していたように感じます。

・芸能活動自粛から離婚へ

木下優樹菜さんは2019年大晦日に、夫であるフジモンさんとの離婚を発表しました。人気ママタレとして、オシドリ夫婦として、テレビやCMなどにも出演していただけにまさかの離婚は大きな驚きでした。

ただ、ここでもまた批判を招いてしまったのです。

何で大晦日?というものです。

つまり新聞が休刊日に入り、テレビも年末年始特番で、通常のワイドショーなどが無いこの年末年始を計算して発表したのだろうという批判です。インスタはまたしても万単位のコメントで炎上状態となり、コメントを封鎖したことも火に油を注いでいます。

「逃げ」に対して、ここまで批判が巻き起こっていることへに対応が全くできていないのです。危機管理コミュニケーションの視点からいえば、全く危機管理ができていない状態といえます。

この先はどうなるでしょうか?

・謝罪会見という返り血を浴びる度胸

ビートたけしさんは謝罪どころか自己正当化とマスコミ批判に終始した強烈な記者会見を開いた結果、マスコミからは大批判を浴び、またテレビ番組に出ることもできなくなりました。しかしこの一貫した姿勢は多くの共感を呼び、マスコミ自身からも行き過ぎた取材への自己反省の声も聞こえるようになりました。

しかし当時テレビタレントとして、お笑いタレントとしてトップに立ち、頭の良さを誰もが認めるたけしさんだからこそできた芸当で、これを他のタレントができるとはとても考えられません。マスコミと戦って自分の正当性を訴えることは、全盛期のビートたけしでさえ容易ではないほどとてつもなく高いハードルです。今回の一連の動きを見る限り、木下さんにそうした正面突破作戦が取れるとはとても考えられません。(おバカタレントという役割とは別にして)

批判の矢面にさらされるのはたいへんな苦痛でしょうし、おそらくご本人も嫌なのだろうと想像します。そこで事務所など専門家が用意したと思われる謝罪文公表、大晦日の離婚発表と、一連の流れはこのまま逃げ切りたいという意向が全面に出ています。しかしそれは自身のタレント生命をも消してしまう大きなリスクと隣り合わせです。

本来元ヤンキーということも含め人気の源だった木下さんであれば、自ら批判を浴びるのはかなり有効な通過儀礼だと考えられます。元ヤンなりのオトシマエとして、レポーターの猛批判を浴びることは十分な説得力があります。少なくとも今のまま、芸能界での存在そのものがフェードアウトしてしまうリスクを考えれば、ダメ元でも挑戦する価値はあるように思いますが、それを決めるのはご本人の度胸次第でしょう。