2014年10月3日発行 vol.45
詩人・谷川俊太郎が、月に4回(毎週金曜日)、あなた宛に
とっておきの詩と、半径3メートルの日常を写真にして、届けます。
ドキッとする、ワクワクする、笑いたくなる、泣きたくなる……
産地直送、谷川さんからのポエメールです。
〈本日のメニュー〉
◎詩「触る」
◎写真 今週の一枚
◎P.S.
◎Q&A
触る
木に触ると
木はざらざらなのにほんわかしてる
石に触ると
石はごつごつで冷たいけど氷とは違う
鉄に触ると
鉄はつるつるで硬いけどいつかは錆びる
こんにゃくに触ると
ぷるんとふるえてなんだか怒ってるみたい
言葉に触ると
触れる言葉もあるけど触れない言葉がいっぱい
瓦礫に触ると
ガレキにならないものが心の中にあることが分かる
空気に触ると
いつも触ってるから有難みが分からない
土に触ると
どうして懐かしい感じがするんだろう
川に触ると
明るい水平線が見える 暗い海底が見える
人に触ると
好きか嫌いかすぐ分かる
赤ん坊に触ると
笑いたくなる泣きたくなる
宇宙に触ると
空気に触るのとおんなじだ ここが宇宙だから
あまり手紙書かないので、まだ未使用のシール。 (俊)
本日の詩
*『川俣正・東京インプログレス -隅田川からの眺め ドキュメント-』収録 2011年
Q: 太陽も実は7万km/hのスピードで動いているそうです。 どこに向かって動いていると思われますか? (新潟県 らんけいごおさん)
A: ここ、あそこ、どこ?というような人間の空間感覚を超えたほうへ動いているのではないでしょうか。 科学はまた違った答えを出すのでしょうが、私は日常の暮らしからあまりにかけ離れていることについては、詩的に答えるほうが楽しいと思ってます。 (俊)
■発行元:ナナロク社
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