写真集食堂めぐたまでは月に一度、本の持ち主である飯沢さんの「写真集を読む」という講座を行っています。
第11回目となる3月22日のテーマは〈荒木経惟を読む!Part2疾風怒濤の80年代〉でした。
前回からはじまった荒木経惟の連続講座。Part1では初期写真集をみていきました(前回の様子はこちら)。続くPart2は「アラーキーの確立期」ともいえる70年代から80年代の写真集です。
1972年に電通を退社し、フリーになった荒木は疾風怒濤の勢いで70・80年代を駆け抜けていきました。
『東京は、秋』『荒木経惟の偽ルポルタージュ』『荒木経惟の偽日記』『少女世界』『東京物語』といった写真集をみながら、【荒木世界】へと誘われていきます。
飯沢さんによると【荒木世界】とは、歌舞伎の見立てのように実話とフィクションをないまぜにし、虚と実の境を曖昧にすることで作り出される世界だと言います。
それは例えば、『荒木経惟の偽日記』のように日付順に並べられている写真集。実はこの写真集はカメラの日付機能を操作して、全く別の日に撮られた写真を同じ日の出来事のように並べているのだとか。
こうした趣向や細工をさらりとやってしまう粋なところを、飯沢さんは「アラーキーは最後の江戸人だ」と言っていました。
また、写真に添えられた言葉の巧みさに注目してみるのも【荒木世界】を味わうコツです。荒木がつけた偽名によって、彼に撮られた女性たちは皆、彼の舞台に立つ女優へと変身してしまうのです。「アラーキー」という存在もまた、【荒木世界】のキャラクターの一人と言えるでしょう。
飯沢さんの語りによって、お客さんはますます【荒木世界】に引き込まれていくようでした。
次回、Part3は『センチメンタルな旅・冬の旅』を中心に、90年代の写真集を読んでいきます。
1991年に出された『センチメンタルな旅・冬の旅』は荒木の妻、陽子の死を写真と言葉で綴っています。これは1989年の『東京物語』の陽子の写真ですが、どこか予感めいたメランコリーな雰囲気が漂います。
(2015年3月22日開催・写真/文 館野 帆乃花)
「飯沢耕太郎と写真集を読む」はほぼ毎月、写真集食堂めぐたまで開催されています。
2017年1月開催分からは解説のたっぷり入ったロングバージョンをお届けします。
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