5月17日、夏のような日差しの日曜日、月に一度の連続講座「飯沢耕太郎と写真集を読む」が開かれました。
写真集食堂めぐたまには5000冊以上の写真集がずらりと並んでいます。
すべて自由に読んでいただけますが、何しろ5000冊もあるので、どれを手に取ればいいのかと迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そもそも、写真を「読む」ってどうゆうこと?と思われる方も多いはずです。
そこで写真評論家であり、本の持ち主である飯沢さんが毎回テーマを決めて写真集を紹介しているのがこのイベント。
13回目を迎えたこの日のテーマは「荒木経惟を読む!Part4アラーキーの現在形」。
4回にわたってアラーキーこと荒木経惟を追ってきたこのシリーズも今回で最終回です。(いままでの様子はこちら)
最終回では、2000年代から現在までの写真集を見ていきます。
「写真の並びは小説だ」という荒木の言葉は、写真集を「読む」手がかりになるはず。
荒木経惟は、現実に起こる出来事をどう写真におさめ、本に編むのかを常に考えている写真家だと言えます。
2000年代に入り、荒木の評価は世界的なものになっていきました。
評価が高まると同時に、荒木自身の表現の幅も広がりをみせ、『緊縛写巻』(2006年)や『遺作 空2』(2009年)では、写真に筆で色をのせたり、字を書いたり、写真の上に別の写真や新聞記事をコラージュしたりと「写真家」という枠に収まらない作品が現在進行形で次々と生まれています。
『愛のバルコニー』(2012年)は1982年から立ち退きを余儀なくされる2011年まで、自宅のバルコニーを撮り続けた1冊です。
妻との日常、妻と愛猫のチロを亡くした後の寂しげなバルコニー。
移り行くバルコニーの姿は荒木の心そのものでした。
同じ場所を撮り続ける定点観測的な撮り方は最新作の『道』(2014年)につながっていきます。
荒木は3.11以来自宅から見える道と東の空を撮り続け、その写真は『往生写集』(2014年)でも見ることができます。
すでに400冊以上の写真集を発表している荒木ですが、その勢いは衰えることを知らないようです。
シリーズ4回すべてご参加いただいた方や海外の方もいらしていて、荒木の人気を改めて思い知ることとなった講座でした。
6月からは新しいテーマで写真集を読んでいきます。
次回もたくさんのご参加をお待ちしております。
(2015年5月17日開催・写真/文 館野 帆乃花)
「飯沢耕太郎と写真集を読む」はほぼ毎月、写真集食堂めぐたまで開催されています。
2017年1月開催分からは解説のたっぷり入ったロングバージョンをお届けします。
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