落語は今日も生きている-COREDO落語会の名高座- 山本益博
1、「初天神」春風亭一之輔 2017.11.25第12回COREDO落語会
元は上方落語、毎年1月25日に行われる天満宮の祭りに出かけた父と子の噺で、三代目三遊亭円馬が東京へ移したとされる。小生意気な金坊が飴やみたらし団子、さらに凧を買ってくれと駄々をこね、父親の八五郎を困らす。
「初天神」は落語家の新米、前座によって演じられることも多く、前座噺に分類されるが、真打ちが高座にかけるとひと味もふた味も違う落語になる。この噺を初めて面白いと感じたのは、いまから40年ほど前に聴いた、現在人間国宝である柳家小三治師匠の「初天神」だった。何より、子供ながら時に大人びた口調で「お父つあん」を困らす金坊が魅力的だった。小言をいう、愚痴をこぼす、叱りつけるなど、日常茶飯事の言動に妙な説得力があって、「初天神」はじめ「小言念仏」「かんしゃく」など他の追随を許さない。
当代では、「初天神」は春風亭一之輔にとどめを指すといっても過言ではないだろう。