ネットフリックスが独自配信コンテンツに多額の投資:独自化戦略に何を学ぶべきか?=理央周

動画配信大手の米国ネットフリックスが、自社で配信するオリジナルコンテンツの制作費を、大幅に増やす、というニュースが話題になっています。かくいう私も、 昨年AIスピーカーを購入。自宅でGoogleホームを、オフィスではAmazonのエコーを使い分けて、「どちらがいいのか」試しています。音楽配信については、GoogleホームではSpotifyを、Amazonエコーでは、そのままAmazonprimeMUSICの、アプリを入れて使っています。次に楽しみたいのが、「動画配信サービス」です。

Googleホームを購入した際に、「Google Chrome Cast」をおまけにもらったので、今、自宅で見るためにどの動画サイトにするか、分析をしているところです。メジャーな動画配信サービスには、ネットフリックスの他にも、HuluやdTVなど、数多くありますが、それぞれ、百花繚乱という感じで、自社の特徴を出しています。

月額での価格帯も、ほぼ同じようなレンジに、集中しているように見受けられます。その中で、ネットフリックスをはじめとして、各社何をイチオシにしているのか、その背景に何があるのか、そして、ネットフリックスは、なぜ、自社コンテンツにこだわるのか、について深掘りをしていきます。

ネットフリックスはどう競争を戦うのか?

競争優位になるための独自性をどう生み出すのか

日本経済新聞の記事によると、ネットフリックスが発表した2018年のコンテンツ制作費は、約8000億円。これは、対前年比25〜33%増となり、ソニー映画部門の売上高にも匹敵する数字とのこと。また、ヘイスティングスCEOの言葉として、「魅力的な独自コンテンツが、米国内外でも功を奏している」とあります。

先述したように、スマホやAIスピーカー、アップルテレビやAmazonファイアーなど、テレビへのキャスト系のデバイスの普及に伴って、動画配信サイトの競争も激しくなっています。

値引き合戦、価格競争に巻き込まれないようにするために、値段での優位性「以外」の点で、例えば、動画配信タイトル数や、配信の種類での差別化、Huleは海外ドラマの本数の多さが特徴だし、ネットフリックスは、3つのプランを用意し、選べる、という価値を提供して、競争優位に立とうとしています。

ネットフリックスはなぜ独自コンテンツの制作なのか?

その中で、なぜネットフリックスは、巨額の投資をして、独自コンテンツを制作する、ということが基本方針なのでしょうか?

まず、本数を増やす、コースを増やす、という自社サービスの属性的な側面で勝負をすると、顧客側から見た場合、「比較がしやすい」点での、勝負になり、最終的に「どれも同じような感じなら、安い方にしよう」と、価格競争に陥りがちです。

「他よりもいい数字で」と、他社と比較しただけでの差別化だと、価格に限らず「下げる合戦」になる、ということが言えます。

しかし、「ここだけ」という独自ポイントを持てると、そこに行く、そこで買うという理由が、はっきりします。スペックで比較されなくなる、ということになります。

ネットフリックスの独自コンテンツの制作とは、巨額の投資による、「オリジナル」のムービーやテレビドラマなど、ネットフリックスだけでしか観ることができない、コンテンツを創造する、ということになります。

これは、コンビニやGMS各社が、揃って「プライベートブランド」を創る、考え方と似ています。

セブンプレミアムのシリーズが欲しい人は、「コンビニはどこでも同じだけど、プレミアムが欲しい」と、セブンイレブンに行く理由が明確になる、ということです。

ネットフリックスのように、本格的な独自コンテンツに人気が出てくると、市場での希少性も高く、他社からの参入障壁も上がり、真似されることなく、独自性を維持できます。

ネットフリックスの事例から何を学ぶか?

では、私たちはこのネットフリックスの事例から、何を学ぶべきでしょうか?

まず、競合他社との「類似点」、たとえば、スペックや価格などで、安易な競争をするのではなく、自社だけができることを生み出す、という姿勢になることが大事です。

そもそも、独自化とは、競合他社とは異なるプロダクトを作る、という意味ではなく、「顧客から見て、他社よりも魅力があるように感じる」プロダクトを開発することです。

言葉で言うのは簡単ですが、なかなか見つからないのが現実だと思います。

まずは、顧客価値を見直してみることから、始めるといいでしょう。

うちの強み、うちが提供できること、ではなく、「自社プロダクトを使ったお客様は、何を感じ、どう嬉しいのか?」が顧客価値です。

「うちのプロダクトはここが強いのです」、ではなく「お客様はこう喜びます」となります。主語は、うちのプロダクトではなく、「お客様」なのです。

常に、「お客様だったら、何を感じているのか」「お客様が喜ぶ姿を想像する」というようなことを考える習慣をつけると、自社目線からお客様目線になれるでしょう。

ぜひ、明日から使って見てください。

■目次

… 1. 特集「ネットフリックスの独自化戦略」

… 2. コラム 「インディアナ大学の家族寮はメルティング・ポット」

… 3. 時間術「10転び11起きで見えたもの」

… 4. 著作・イベントのお知らせ

… 5. 編集後記

2.コラム:インディアナ大学の家族寮はメルティング・ポット

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