特集【スマホ決済はどこが生き残るのか?〜ペイペイの戦略をマーケティングで紐解く】
消費者が購入する際の決済手段の一つの、キャッシュレス化がどんどん進化しています。
ここのところ、ニュースでも大々的に取り上げられている、ソフトバンクの「ペイペイ」も、スマホ決済もそのキャッシュレスサービスの一つです。
消費税変革や、2020年の東京オリンピック時の、インバウンド需要の増加を睨んで、政府もキャッシュレス化を進めているとのこと。
2025年までに、支払いの40パーセントをキャッシュレスにする、という方針を打ち出しています。
キャッシュレスで購買できる手段は、クレジットカード、交通系カードのようなICカード、そしてQRを読みとるだけのスマホ決済が主なものです。
そんな中で、マーケター的にスマホ決済をはじめとする、キャッシュレス化の動きがどうなるのか、私たちは何に気をつけ、何を学び、何をしてくべきかを考えていきます。
ソフトバンクのペイペイは何を狙っているのか
ソフトバンクのペイペイは、その「100億円あげちゃうキャンペーン」で、大きな話題となっています。
ラインペイや楽天よりも後発のペイペイとして、話題を醸成すること、そして、幅広い認知と、使える範囲を拡大することを、初期の戦略としています。
キャンペーンの内容は、購買額から20%戻ってくる(上限月50,000円)、40回に一回の確率で100,000円までのボーナスポイントがある、総額は100億円とし、そこで終了。といったような内容です。
12月5日からですから、もう始まっていて、すでに多くの人たちがこの恩恵を受けているとの報道も流れています。
購買一回あたりを20%オフにすることで、とりあえずこのスマホ決済「ペイペイ」をやってみようという試用促進の意図があり、またその後の購買の頻度を上げようとしています。
また、40回に一度の10万円のポイントバックによって、高額商品を買いたくなるという消費層を取り込もうとしています。
これは、アップルやダイソンの高額だが高品質というイメージを持つ企業の戦略とマッチし、がゆえに相性も良いでしょう。希少価値がある商品を「ペイペイ」で買うとう動機づけになります。
ペイペイは、中国大手QR決済の「アリペイ」と提携していることで、中国からのインバウンド需要も取り込めます。
このように、中長期的に、明確な戦略が立てられている、というように見受けられます。
ユーザーからのメリットは何か?
では、スマホ決済を実際に使うユーザーの立場から、考えてみましょう。
買う側のユーザーの方は、スマホで店頭のQRコードにかざすだけなので、まず簡単。
会計がスピーディになります。
さらに、家電量販店などとのポイントもダブルでつくので、さらにお得、というメリットがあります。
お金の出し入れが記録されることで、使いすぎにも注意できるので、節約型、しっかり者のユーザーにとっても便利です。
一方で、潜在的な面倒さとしては、アプリダウンロードなど最初の手間がかかること、ID登録までの紐付けが面倒、使える店がまだまだ限られていること、ペイペイへのアクセスの集中で、回線が動かなくなったというハプニングもあったと報道されました。
交通系カードよりも楽に使えるとか、これらの壁を乗り越えるだけのメリットを打ち出すことが、これからの課題です。
さらに、ユーザー側は、最初のサービスが良くても、それ以降のサービスが充実していなければ、当然ですが、他に流れてしまいます。
ペイペイとしては、100億円、10回に1回10万円、20%還元などとお金でのキャンペーンを仕掛けたので、現段階では、お値打ち、安さが好きな顧客層が流入している可能性もあるため、以降のキャンペーンでどう舵を切っていくのか、が重要になります。
このペイペイと、ラインペイ、楽天、オリガミペイとを比較してみると、ペイペイとラインペイは、今は決済手数料なしというのが特徴です。
つまり、自社決済を使えるお店を増やす戦略です。
これは、昔ヤフーBBがADSLサービスを開始した時に、使用できる機材を無償で配布した戦略と同じです。
また、スマホ決済に関しては、店側にとって機材不要で電源不要、QRコードの紙を置いておき、ユーザーにスキャンしてもらい、金額を打ち込むだけ、というプロセスなので、店側の設備投資が少なくて済むという加盟店のメリットがあります。
ラインペイはペイペイとの共通点は多いのですが、メッセンジャーアプリの特徴を生かし、テレビCMもやっているように、友達間で送金が簡単で、割り勘などもできるというのが差別化ポイントです。
楽天ペイは、楽天カードでポイントが増えることが特徴です。
来年からは、郵貯やセブン&アイも参入してくる携帯キャリアのように、いつかは3つくらいに集約されていくでしょう。
そしてもちろん、ユーザー側にとっての決済手段は、もちろんスマホ決済だけではありません。
キャッシュレスでは、クレジットカード、交通系カードもあるし、プリペイドカードもあります。
さらに、見逃しがちですが、決済手段としての現金も、当たり前ですがあるわけです。
これらの決済手段には、世代間で今は大きな差があることも推測できます。
ペイペイもこれらの直接・間接競合との差別化ポイントを、ターゲット層を明確にしながら、以降訴求していかなければ、話題性のみで終わってしまいます。
どんな戦略で、維持・継続策を打ち出してくるのか、が今からとても楽しみです。