全国にイカめしは数多あれど、イカ寿司とは珍しい。シンプルなイカのイラストが描かれたパッケージもどこか今風で洒落ている。
駅弁調製元は番匠本店。福井駅開業6年後の明治35年(1902)に創業した老舗店だ。「越前かにめし」などカニやサバの駅弁で有名な店だが、イカも負けていない。
日本海で水揚げされたスルメイカをメーンに取り上げたこの「東尋坊の焼きイカスシ」、ふたを開けると、容器いっぱいにイカ・イカ・イカ。実にイカしてる駅弁だ。
甘酢に漬けた後、香ばしく焼き上げたスルメイカの中に2種類の酢飯を詰めている。ひとつは県産の三方梅を使った「梅ちらし」。そして福井県の郷土料理のへしこ(サバのぬか漬け)を使った「へしこ寿司」。異なる味わいを楽しめるのがポイントだ。
驚くのはイカの食感。厚い身は弾力性に富んで歯ごたえ十分。噛めば噛むほどイカの風味が増してくる。とくに「へしこ寿司」入りのイカは、ぬかの香りと塩味が食欲を刺激して、酒を進ませる。
ゲソを添えたのも左党には実にありがたく、福井に行くたびに駅弁とセットで地酒も買ってしまう。
車内で食べるのはもちろん、福井市内を流れる足羽(あすわ)川沿いの2キロの桜並木の下で食べたい駅弁だ。
880円/番匠本店