飽和状態のコンビニ業界の次の一手!に学ぶイノベーション発想法と水平思考=理央周

飽和状態のコンビニ業界:各社が打っている手に何を学ぶか?

ほぼ毎日お世話になるコンビニエンスストア。私が住んでいる駅の周りだけとっても、セブンイレブンが2軒ある上に、さらに今月新しくローソンができました。

今号では日本経済新聞の記事、「コンビニ限界説に挑む」から、業態としてのコンビニの変遷と、現在コンビニ各社が打っている手をレビューすることで、顧客価値の創造は顧客ニーズの発見から始まります。顧客が感じる価値の発見方法を、一緒に学んでいきましょう。

フレームワークの復習:顧客価値の発見

今号のテーマは「顧客価値の発見」です。(実践マーケティング入門 第4章 96ページです)

このメルマガで何度も取り上げているように、あなたの顧客がプロダクトを購入するのは、その製品やサービスに「価値」を感じているからです。

「価格に見合った製品である」「他の企業よりも良いサービスが期待できそう」といったように、想定顧客層から見て、競合他社よりも、「良い」と感じられた時に、あなたの顧客は、あなたのプロダクトを購入します。

この顧客が感じる相対的な優位性を、「顧客価値」と呼びます。

しかし消費財では特に、顧客は心で感じる情緒的な価値で、まずはプロダクトを判断し、ついで価格やスペックなどの機能的な価値を確認します。

したがって、顧客価値を最大化するためには、顧客の心理状況を把握し、「欲しい」という感情に訴える「何か」を、自社プロダクトに付加する必要があります。

この価値を発見するのは、なかなか簡単ではありませんよね?

しかし、簡単でないが故に、発見できたら、競合他社より優位に立てることも事実です。

ではセブンイレブンをはじめとする、コンビニエンスストア業界の事例から見ていきましょう。

コンビニ限界説に挑む大手各社

日本経済新聞2017年12月9日の記事によると、「コンビニ各社は、成長の限界を打破するために、動き始めた」とあります。

以下、記事から抜粋します。まず、その背景として“売上も店舗数も増えているのに、既存店での売り上げが減ってきている”“コンビニの店数は、約48,000箇所ある、国政選挙の投票所より多い”という事実があります。

しかし、コンビニはスーパーやGMSと異なり、直営ではなくフランチャイズ制のため、新規出店を促すには既存店が儲かっていることを、オーナー候補者たちに示す必要があります。したがって、既存店の売り上げ不振は、新規出店促進にも大きなマイナス要因なのです。

この状況を打破するために、コンビニ各社は、新しい事業を開始しているとのことです。例えば、セブンイレブンでは、シェア自転車のサービス事業を、ソフトバンクグループと開始し、さいたまを皮切りに、2018年末までに、全国1000店舗、5000代を目指すそうです。

また、ファミリーマートでは、コインランドリーやスポーツジムと組み合わせた、店舗開設を開始し、2019年末までに、500店舗のコインランドリー併設店、今後5年間でジムと併設店を300店にし、集客増を図るとのことです。

これまでのコンビニ業界

もともとコンビニエンスストアは、一般的な小売業の一つでした。しかし、その特徴は、セブンイレブンの「開いててよかった」という、キャッチコピーにあったように、24時間、駅などの近くにある利便性の高い、小売の業態としての特徴で、成長を続けてきました。

さらにコンビニの多角化は、今に始まったことではなく、80年代には、コピー機を設置、90年代には、公共料金が支払えるようになり、今では、ATMでお金を下ろせたりもできますし、宅配を出したり、受け取ったりもできます。

コンビニエンスストアは、自社の事業を、「小売業」という定義から、「顧客の利便性を高める店」と、“再定義”したのです。

上記の例で言えば、「物を販売する場所」という定義に、「会社や専門店に行かなくても、コピーが取れる」「銀行や郵便局に行かなくても、公共料金を支払える」という使用用途を“付加”したのです。

これにより、顧客が潜在的に感じている問題を取り除き、立ち寄ってもらうことで、「ついでに買い物をしていく」という顧客行動が生まれて、これまで発展をしてきた、と言えるでしょう。

コンビニ各社に「何を」学ぶべきか?

マーケティングの大家である、フィリップ・コトラー教授は、このように、従来のフレームワークの手法で、ロジカルに問題を深堀する垂直的な思考と比較して、「水平思考」と呼んでいます。

事業を定義し、市場と自社プロダクトを整理、ターゲット設定をして、ポジショニングを決定して、顧客とのコミュニケーションを図っていく、というステップを、論理的に、また、データなどから演繹的に、結論を導いていく手法を「垂直思考」と呼びます。

この手法は、顕在化している問題点を発見し、解決するには向いています。しかし、垂直に考えていく段階で、不要な項目を削除し「絞る」ため、優先順位を落とした中にも、事業としてのチャンスがあることも多々あります。

消費者の思考も複雑になり、欲求も多様化している現在において、垂直思考だけでは限界があるのです。

水平思考とは、全体から個を導き出そうとする、演繹的な垂直思考と正反対で、特定の「個」から何かを発見しようと努力する、帰納的なアプローチで発見する考え方です。

したがって、新プロダクト開発など、新しい価値を一から生み出す時には、水平思考の方が向いているのです。

では、どうやって自社ビジネスの中で、新プロダクトを開発する際に、水平思考をすれば良いのでしょうか?

まずは、コンビニがやったように、自社ビジネスの定義をまず明確にしてください。

コンビニ業界が、24時間開いている小売店から、不便さを解消するサービスを提供する場所、という事業の再定義を行なったように、

1. 今の定義をまず明確にする

2. 顧客価値を洗い出す

3. その際、提供する利益のみではなく顧客が犠牲にするであろう不便さ、例えば商品の見つけにくさや購入にかかる時間の多寡なども同時に考える。

4. 2と3を熟慮して、事業を再定義し実施する

というステップになります。

1点重要なことは、垂直思考が不要で、水平思考だけで物事を解決できる、というわけではない点に注意をしてください。

混沌とした市場を定義し、自社プロダクトの顧客価値を明確にし、ターゲット層と市場で優位になるポジションを決め、顧客コミュニケーションをとるステップが、あくまでベースになります。

その折々に水平思考を織り交ぜ、市場に対して機会損失をしていないか、ということを常に見ていくことで、多様化していく市場を捉えることができるようになるでしょう。

あなたも、明日からやってみてください。

■目次

… 1. 特集「コンビニ各社に学ぶイノベーション発想法」

… 2. コラム 「おでん車の新結合による破壊的イノベーション」

… 3. 時間術「基本徹底ができたら習慣化!」

… 4. 著作・イベントのお知らせ

… 5. 編集後記

2.コラム: おでん車の新結合による破壊的イノベーション

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