「結果を出す」とは何か ~M-1GP10位というマヂカルラブリーの「結果」

毎年話題を呼ぶM-1グランプリ。漫才の実力勝負としてすっかり定着しただけでなく、この種のコンテストの老舗として、結果がその後の芸能生活を左右する巨大な影響があります。「結果を出す」ことを要求される会社員にとって、それが何を意味するのか、M-1グランプリ2017結果を見てみたいと思います。

1.KOCにゃんこスター問題が問う、「結果」とは?

お笑い番組に興味ない方には全くわからない素材で恐縮です。M-1が漫才のコンテストであり、KOC(キング・オブ・コント)がコント日本一を決めるコンテストであるという前提で書いてます。そのいずれも2017年の結果が何だったかを検証するのが本稿の主旨です。

KOCは実力派のかまいたちが優勝。2位は結成間もないド新人コンビ(個人芸歴は別)にゃんこスターでした。「優勝すると世界が変わる」といわれるM-1に次ぎ、バイきんぐやコロチキといった、決して知名度のない人たちが優勝後一気に露出を増やしたり、そのままポジションを得たバイきんぐ・小峠さんのような例もあります。

KOC2017は、優勝のかまいたち以上に、2位のにゃんこスターが注目を浴び、無名の新人コンビが一気に爆発的な露出を獲得しました。その出方は、かまいたちが出るたび「優勝したのは僕らです!」と自虐ネタがつかみになるほど、にゃんこスターは第ブレイクしています。少なくともKOC後の露出において、2位が優勝を食ってしまったというのは実態だといえるでしょう。

2.優勝者より目立つ

コントでも漫才でも秀でた実力派、かまいたちのお二人はこの状況をネタにはしているものの、すごく嫌がってはいないように見えます。優勝や最優等という成果がそのまま評価にならないと思われ始めたものに、流行語大賞があります。その偏向した審査への疑問から、流行語大賞は価値を問われるような意見が見られるようになっています。流行語に選ばれると売れなくなるジンクスのためか、今年の受賞者は皆授賞式に来ない現象が起きたとのこと。

確実にブレイクを実現できたにゃんこスター。今の人気はすさまじいものの、このブームが去った後、一発屋として消えて行った多くの前例の一つになるのではという意見も山のように出ています。むしろ程よい露出で息長く活動ができるためには、かまいたちの状態は決して悪くないと見ることもできます。実際一本だけのネタだけで、トークやバラエティ対応がどこまでできるか、見ていてハラハラするのは、多くの消えた先輩たちにあまりに似た存在だからかも知れません。

一方漫才のM-1決勝では、2位どころか最下位10位だったにもかかわらず、マヂカルラブリーが良くも悪くも注目されています。決勝に出られたものの、審査員の上沼恵美子さんからけなされ、それを上手く返すこともできず、結果最下位に終わったマヂカルラブリーは、M-1ボロ負けを自らネタにしています。注目される量では優勝のとろサーモンと和牛、ミキの決勝トリオに次ぐか迫るほどで、それ以下の出場者をすでにしのぐほど。

3.「結果」とは?

厳しい競争にさらされるサラリーマンは常に結果を求められるようになりました。「結果を出せ」と上司から要求され、その上司はさらに上の上司から結果を求められ、企業組織全体が結果重視、結果主義におおわれる環境が一般化しています。

ではM-1やKOCでの結果とは何でしょう?

本来であれば優勝こそが結果であり、決勝戦まで進むこと自体が、現実にはとんでもない競争を勝ち上がったのものではあっても、優勝できないことには「結果が出せなかった」と見られるでしょう。

しかし結果とは単に順位だけでしょうか?これまでM-1やKOCで優勝し、今や名前すらも聞かなくなった芸人さんは多々います。優勝はたいへん意義のあることだし、実力含めたいへんな成果だといえます。一方で、芸能というマーケットで求められる「結果」がコンテスト優勝なのかという問題はどうでしょう。

ビートたけしさんはツービート時代、NHK新人漫才コンクールでダントツにウケたのに、優勝(最優秀賞受賞)したのは京丸京平だったと、ずっとネタにしていました。優勝だけが結果でない例はツービート時代からあったのです。

4.結果の設定こそすべて

売上や利益という結果で縛られるサラリーマンは厳しいものです。しかしこの評価結果とその達成基準について、どこまで認識しているでしょう。売上を上げるのは普通良いことでしょう。でもそれが目標や標準利益率を伴わないとしたら?

大きな取引を上げることはとても重要だと思いますが、それが偶然のラッキーパンチで決まるものだとしたら?地道でも適正な利益を積み、しかも継続的に収益を上げる取引や仕組みが作れたとしたら?何が評価されるのかは、その所属組織で求める結果設定が何であるかで決まります。

芸能界で売れ続けることはとんでもなく難しいことです。一発屋で話題になることすらできずに消えていく人たちが圧倒的に多い中、たとえ一発でもいいから当たりたいと思うのも当然だと思います。審査員皆が褒める中、上沼さんからボロクソに言われたという「結果」を、結果として生かして仕事をする。少なくとも注目を浴びる機会を得られたのであれば、その後どうしていくのか、単なる結果の順位だけで決まらないことをマヂカルラブリーのお二人は見せてくれているのではと、感じた次第です。