消えた駅弁12「夫婦釜めし/糸魚川駅」

 

 昭和62年(1987)の発売以来、ロングセラーを続けていた人気の駅弁だった。その秘密は、名前のとおり「夫」と「妻」の2種類の釜めしがセットになっていること。元々はふたりで分け合って食べるように開発された駅弁だが、食いしん坊はみな一人で2つとも食べていた。もちろん私もひとり占め。釜めし2つ、結構なボリュームに思えるがやや小ぶりの釜なので平気で食べ終えたものだ。

「夫」の釜めしは濃いグリーンの容器入り。中に収まるのはたくさんの山の幸。マツタケ入りの炊き込みご飯の上に、マツタケのスライス、山菜、栗、鶏肉のそぼろなどを彩りよく配した。「妻」のほうはオレンジ色の容器入り。海の幸の釜めしで、エビのダシで炊いたご飯の上に、殻付きエビやホタテ、カニカマ、ごぼう、レンコン、錦糸卵などをのせていた。ご飯を薄口に仕上げているため、エビやホタテの味覚がいっそう引き立つ。なるほど夫と妻。納得の内容である。

 夫と妻。山と海。対決駅弁というわけではないけれど、山の幸の釜めしはフタを開けた瞬間にマツタケの香りが立ち昇って食欲を刺激するため、こちらから食べてみようという気にさせる。食材を見るとオーソドックスな釜めしだが、山菜や漬物が絶妙なアクセントになっておいしさを増幅させている。

 もちろん海の幸満載の釜めしも残すところなし。

 好きだったな、この駅弁。

 調製元の「たかせ」は2013年閉業、ああもう8年も経つのかぁ。

1300円(当時)/たかせ