元気なドン・キホーテに学ぶ顧客満足を超える顧客歓喜=理央周

特集 【顧客満足では不十分ドン・キホーテに学ぶ「顧客歓喜」】

ドン・キホーテが元気だ。2016年6月期決算で27期連続の増収増益とのこと。

私の地元の名古屋の、中心地栄の、さらにど真ん中にも大規模店舗を構えている。この店は、錦という名古屋有数の飲食の町の入り口の角地に立っていて、夜もさながら、不夜城のごとく煌々と街全体を照らしているかのようだ。

中に入ってみると、今もインバウンド需要の恩恵を受けている感じで、アジア系の観光客も多いし、場所柄、高校生や、週末には家族で買いに来ている様子も見られる。

【ドン・キホーテの「何を」〜プロダクトの特徴】

同じ小売の最大手、イオンが総合スーパー事業の不振によって、苦戦している中、なぜ、ドン・キホーテは好調を維持しているのだろうか?

ドン・キホーテの「小売店」としての特徴は、お得感あふれる低価格戦略にある。それに加えて、豊富な商品ラインアップも見逃せない。天井近くまで、高く積み上げられた商品に、埋もれそうになりながら買い物をする。

後述するが、タワー陳列、というあだ名まで付いている。ここまでくると、単なる陳列の域を超えて、もはや一種のブランドだ。

実際に買い物にいくと、ショッピングカートを持って、楽しそうに、選びながら買い物をしている人たちが大半だ。

実際に、触れてみることができるので、商品の多さももちろんだが、そこに「選ぶ」楽しさが加わっている。単なる買い物ではなく、まるでエンタテーメント・パークにいるようだ。

ドン・キホーテでは、モノを安く売っているだけでなく、「楽しさ」も提供している。

【ドン・キホーテの「誰に」〜ターゲティング】

社長インタビューによると、ファミリー層にターゲットをシフトさせているとのこと。メインターゲットを「節約志向」のファミリー客と位置付けることで、「円高・デフレ基調が戻った1年をチャンスに変えられた」とコメントしている通り、追い風にのっている。

節約志向が強い、ファミリー層の潜在ニーズとマッチしたと言える。

【ドン・キホーテの「どうやって」〜コミュニケーション】

ドン・キホーテの、販売促進の特徴の一つに、店内でのコミュニケーションがあげられる。

まず思い出すのが「これでもか!」と高く積み上げられた商品。「タワー陳列」という通称まである。

また、手書き「風」POPもユニークである。たとえば、単なる商品名と価格の表記だけでなく、「うまみたっぷり ハンバーグ弁当」などと、一言そえられているので、買う側としても、ここにも選ぶ楽しさを見つけることができる。

しかし、陳列の専門家によっては、「所せましと並べると、安く見えてしまう」「お客様が欲しいものを探しにくい」などと、NGを出すであろう。

しかし、今となってはこの陳列やPOPがドン・キホーテの象徴といえるくらいまで、イメージとして浸透している。

【中小企業はドン・キホーテに何を学ぶべきか?】

単に安売りのチェーン店、というだけでなく、「何を、誰に、どうやって」買ってもらうかという、売れる公式の一つ一つに、小さな工夫がちりばめられていることがわかる。

まず、売るモノは商品だけでなく「買う楽しさ」も合わせて売る。店頭でのコミュニケーションも、手書きでいいので、一言「おすすめ商品とその理由を添えてみる。

カフェのメニューで言えば、「自慢のオムライスは3日煮込んだデミグラスソースが一番人気。でも、実は店長おすすめはトマトソース。あっさり目が好きな方に大好評」といった具合だ。

その商品を買った時に、「自分がどうなるのか?」を教えてあげると、お客様も、自分が使っている姿が想像できて、買う理由がはっきりし、買いやすくなる。

お客様がわかりやすいコミュニケーションを心がける。基本中の基本を、思い出させてくれる、ドン・キホーテの快進撃なのだ。

■目次

… 1. 特集 「元気なドン・キホーテに学ぶ顧客歓喜」

… 2. コラム「成果を出すために何をやめるべきか?」

… 3. 書評「センスは知識からはじまる」

… 4. ワンポイント 時間術「結果念出力は自分の棚卸から始まる」

… 5. 著書・イベントのお知らせ

… 6.編集後記

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