アマゾンの攻勢にどう対応すべきか?
米国アマゾン・ドット・コムが、「Amazon ダッシュボタン」と、「Amazon GO」という、2つの衝撃的なサービスに乗り出している。
【Amazonダッシュは自動御用聞きマシーンになるのか?】
Amazonダッシュは、冷蔵庫に貼り付けておけるボタンのような機器で、押すだけで、自宅にいながら、食料品や飲料を注文することができる。
資生堂のシャンプーのTSUBAKIや、カルビーのフルグラなど、12月5日の段階で、参加するブランドも40あるとのことである。
プライム会員対象で、500円の機器代は、初回購入分から差し引かれることで実質無料。自宅が即日配達の地域にあれば、午前中に注文すれば、午後には届くとのこと。
さらに、スマホ連動なので、商品と購入数を一度登録しておけば、その後はボタンを押すだけで注文可能になる。(日本経済新聞より)
まるで、三河屋さんの御用聞きのように便利だ。
私自身も料理をするのだが、「あ、バターがない!」「みりんを買い忘れた」などと、買い物が終わった時などに、買い忘れがあったりする。
今日頼んで明日届くだけでも便利なのに、即日届く、とか、パソコンを開けなくても買い物ができる、さらに、スマホよりも素早く買うことができる、というのは、過剰と言っていいほど便利である。
【Amazonはなぜコンビニ業界に乗り出すのか?】
また、本社がある米国ワシントン州シアトルを皮切りに、コンビニエンスストア事業を展開すると発表した。
インターネット通販を核に、ここまでやってきたAmazonが、なぜ、コンビニエンスストア市場に参入するのだろうか?まずは、市場における取りこぼしをすくいあげたいからであろう。
ここ数年、インターネットでモノやサービスを購入する人は増えているし、もちろん購入量も増えているが、まだ小売りの大半は「リアル店舗」経由での購入である。これはアメリカにおいても、同じことで、AIによる効率化を生かした利益率の高い、リアル店舗を構築することを目指しているようだ。
コンビニを展開することで、よりリアルな顧客の購買データを得ることができるため、Amazonの生命線である、「顧客データ」によるビッグデータ分析、協調フィルタリングによるレコメンデーション機能も、より、精度が高くなり、ひいては自社のサービスの質の向上にもつながるであろう。
もちろん、通常のコンビニのように、レジに並ぶ時間などが短縮できるなど、Amazonが目指している顧客の利便性の最大化にもつながる。(Amazon GOの説明動画はこちらから。とても秀逸です)
【Amazonから中小企業は何を見習うべきか?】
AmazonダッシュもAmazonGOも、リアル店舗を持つ小売企業にとっては大きな脅威になりうる。
しかし、「やはりAmazonには勝てないな」などと諦めるののではなく、逆にAmazonから何かを学び自社のビジネスにいかしたいものである。
まずは、あくまでもAmazonが求めるものは、「いかに便利にお客様に買ってもらえるのか?」であること。
機器としてのボタンを開発することや、コンビニに進出することよりも、「顧客が便利にものを買うにはどうしたらよいか」という日々の発想が、これから新規事業を産み出す源泉になったのであろう。
私が在籍していた20年前から、Amazonは、「お客様のためになることは何だろう?」と日々考え、小さいことを積み重ねていく社風を持っていた。
この「顧客就寝主義」こそが、企業がすべき顧客の創造につながるのだ。
もう一点は、「常に未来を見ること」
この2つのサービスは、Amazonが5年10年後に、顧客が便利に買い物ができるためには、何を提供すべきかを見据えた一手なのであろう。
財務諸表や営業の成績は、非常に重要な数字であるが、あくまで「過去を表す数字」である。しかし、そこにこだわるのみではなく、未来を見つめる視点を持つことで、画期的な製品やサービスを開発することができる。
顧客中心主義と、未来を見据える視点こそが、新たな顧客を産み出すのである。
■目次
… 1. 特集 「アマゾンの攻勢にどう備えるか?:Amazon GO とAmazon Dash」
… 2. コラム「10年後にある仕事なくなる仕事:AIの進化と仕事の関係」
… 3. 書評「ビジネススーツを格上げする60のルール」
… 4. ワンポイント 時間術「思いつきは捨てよ、ひらめきこそ命」
… 5. 著書・イベントのお知らせ
… 6. 編集後記