CCCは主婦の友社買収で何を狙うのか?=理央周

CDやDVDのレンタル事業のTSUTAYAや、蔦屋書店、蔦屋家電を営む、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、中堅の出版社である、主婦の友社を買収する、という方針が正式に発表されました。

小売業が中心だった、 CCCが、なぜ、メディアである出版社を買収するのでしょうか?一見、自社の核になる事業から、近くはあるが遠い企業買収に、何を目的としているのか、を、今号では考えていきます。

CCCは主婦の友社買収で何を狙うのか?

CCCの目論見と主婦の友社の特性

まず、 CCCとしては、リアル店舗でのCD・DVDのレンタル事業が、ストリーミングなどの普及に伴い、苦戦しているため、活路を見出したい、という問題と課題があります。

そんな中、一つは蔦屋書店が好調である、という中での、書店事業の拡大は視野に入っているでしょう。蔦屋書店に関しては、昨年GINZA SIXにも新店舗をオープンしています。日本経済新聞の2017年12月13日の記事によると、蔦屋書店の顧客単価は、通常の書店の約3〜4倍の約4000円とのこと。

では、事業として、書店事業に力を入れたいのでしょうか?

出版と、リアル店での書籍の売り上げは、電子書籍やECの台頭もあり、年々減少していますので、単なる、書店数を増やし、顧客単価を上げる、という戦略は、この市場縮小から考えると、得策とは思えません。

CCCとしては書店事業というよりも、コト消費を店舗で体験させる、「蔦屋書店事業」に注力したい、そのために、出版社のノウハウで、「コンテンツ」から小売まで、一気通貫で顧客価値を提供したい、という思惑があると見て取れます。

CCCの思惑に見るリアル・ネット戦略

この川上から川下まで、一気通貫で取り組むビジネスモデルは、ファーストリテイリングのユニクロの事業などの、SPA (Speciality store retailer of Private label Apparel)というサプライチェーンマネジメントに共通します。

ここはシンプルに製造小売の商品供給体制の一本化、くらいに理解するとわかりやすいでしょう。

要は、作り手と売り手が同じであれば、顧客ニーズをいち早く自社プロダクトに反映できる、というような利点があると考えられます。

さらに、主婦の友社には、これまで蓄積してきた、「売れるメディア」の作り方と、販売促進などを含めた手法のノウハウがありますので、この部分も、CCCとしては「欲しい」エリアだった、ということが見て取れます。

CCCの買収の事例から何を学ぶか?

あなたは、この事例から、何を学びましたか?

まず、 CCCは自社を取り巻く外部環境に、素早く正確に対応しています。ECの台頭やリアル書店の衰退、というリスクを、規模の拡大ではなく、新しいビジネスモデルの創造で、カバーしようとしています。

次に、内部環境も状況を正しく認識しています。自社の強みとしての蔦屋書店に、「何を」足せば良いのか、という点がはっきりしていたことが、今回の意思決定につながったのでしょう。

全ての分析手法は、それぞれ単独で使っても意味がありません。外部環境を把握しつつ、(PEST分析)自社内部の状況を鑑み、(SWOT分析)他社に模倣されない独自性(VRIO分析)を打ち出すには何をすべきか、といった流れでの分析が必要です。

その中で、社内外の状況を正しく把握し、スピード持った一手を打つことが重要です。

*このメルマガを、仕事に活かせるように使うコツを説明します。

特集でピックアップするテーマは、最新の売れ筋情報、ヒット商品、マーケティング的な視点から見た新しさ、顧客視点に立っている事例、という基準で選定していきます。

そして、構成は、

- 市場で売れている商品やサービスの事例をピックアップ

- 「誰に、何を、どうやって」のフレームワークで解説

- マーケター視点の“ポイント”を指摘

- 自社に当てはめるにはどうすればよいのか

となっていますので、特に最後に書いてある、「自分の仕事に当てはめたら、この事例やフレームワークをどう使えば良いのか?と考えながら読むといいでしょう。

ぜひ、明日から使って見てください。

■目次

… 1. 特集「CCCは主婦の友社買収で何を狙うのか?」

… 2. コラム 「リサーチデータは素振り、広告表現は試合」

… 3. 時間術「意識すべきはゴールにいる自分の姿」

… 4. 著作・イベントのお知らせ

… 5. 編集後記

2.コラム:リサーチデータは素振り、広告表現は試合

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