消えた駅弁6「ふじのくに 大浜ちらし/三島駅・沼津駅」

 子供の頃からちらし寿司が好きだった。いろんな魚を一度に食べられるし、花畑のような彩りにウキウキしてくる。ひな祭りや誕生日に母が作るちらし寿司は絶品だったな。

「ふじのくに 大浜ちらし」は静岡県沼津市の桃中軒から2015年8月に発売されたちらし寿司の駅弁。寿司めしの上に刻み海苔と錦糸卵を敷き、それらが隠れるぐらい季節の魚介をたっぷり盛り込んで、発売早々人気駅弁の仲間入りを果たしていた。

 たとえば沼津産の深海魚・デン(オオメハタ)や網代産のサクラマス、エビ、イクラ、タコ、卵焼き、高野豆腐。箸休めに酢レンコンを添える。季節によって、サクラマスがタイに代わったり、深海魚もほかのものになったりした。

 魚介は同社特製の酢で締めてあり、酸っぱくも甘くもなく、魚介の旨みがほどよく引き出されていた。魚介を先に食べてしまっても、ご飯だけでもおいしく食べられた。

 同社はもともとサクラエビがメインのちらし寿司を販売していたが、不漁の時期には調製個数が少なくなる課題があった。大浜ちらしでは県産の魚介2種類を表に出すことで難点を解消し、さらに旬替わりとすることでリピーターを取り込むことに成功した。

「大浜ちらし」のほかにレギュラーサイズの「浜ちらし」(680円)も販売していたが、私は当然、大浜ちらしを食べた。

 大好きだったちらし駅弁。ああ、それなのに売店から消えていた。

復刻はないかと桃中軒に電話してみたが「そうですね、ありません」とひとこと。またまたまたまた残念。

860円(当時)/桃中軒