セブンイレブンの雑誌取り置きサービス開始に学ぶオムニチャネル時代の顧客視点
セブンイレブンが9月15日から「雑誌お取り置きサービス」を開始する。約2300種類の定期購読できる雑誌を、発売日に読めるサービスとなる。
“利用者はまずセブンイレブン店頭にあるタブレット端末か、ネット通販サイト「セブンネットショッピング」を通じて定期購読を注文する。発売日になると指定した店舗で雑誌を受け取れる“ (上記 日経MJ 2017年9月13日号より)
セブンイレブンはなぜ、縮小している雑誌という市場に対し、新しいサービスを始めるのだろうか?セブンイレブンに限らず、実際にコンビニ各店舗において、雑誌売り場の面積を縮小している傾向にあるようだ。
【顧客と企業のそれぞれの視点から】
このサービスの、雑誌を買いたい顧客視点からのメリットとしては、
- 通常は前払いしなければならない半年や1年の定期購読代を、受け取りの際に支払う
- 手数料が不要である
- 店頭でのみでなく従来からある宅配サービスでも受け取れる
- 発売日当日に受け取れる
という点にある。そもそも、少なくなってきている「雑誌を買える店」という状況の中で、雑誌を定期購入したい消費者層にとって、大きな利便性を提供することになる。
一方で、セブンイレブン側としては、
- 商品配送網の活用による配送費用のセーブ
- 店舗内の雑誌スペースの削減
というメリットがあるが、なんといっても大きいのは、顧客が「自ら店舗に立ち寄ってくれる」という点だ。
生活者にとって、コンビニエンスストアは、ほんの20年くらい前までは、スーパーマーケットと同じように「何かを買う場所」だった。しかし、公共料金の支払いができたり、宅配便を出すことができるようになったりと、次々にその使用用途を付加している。マーケティングの大家である、フィリップコトラーが言うところの、「水平思考による」既成概念の打破の結果としての、「顧客の使用用途の付加」なのだ。
これらにより、GMSなどよりも多い店舗数で、敷地面積が小さく、品数もそのぶん少ない中で、その名の通り、顧客が「便利に」立ち寄ることで、売り上げを伸ばすことができた。コンビニATMやチケットサービスなども、その最たるものである。
【中小企業は何をすべきか?】
セブンイレブンをはじめとするコンビニ大手の各社は、M&Aなどの合従連衡で、拡大路線を歩んでいる。コンビニ各社においては、その店舗数の多さに加えて、駅前など好立地条件での出店が多い。
コンビニがアマゾンなどのEコマースと競合していく上で、この「リアル店舗」の存在が大きいのだ。どこででも買うことができる、と言う意味での、オムニチャネル化に最も近いのがコンビニ各社だとも言える。
現に、セブンイレブンでは、自社サイトの7Netにおいても、書籍の販売のみならず、店頭でのイベントの告知やキャンペーンなど、リアル店舗への集客と、それだけでなく、相乗効果を狙った販売促進活動を推進している。
セブンイレブンの雑誌取り置きサービス開始に学ぶべきは、ITの活用や、規模の経済の追求ではなく、顧客視点での利便性向上と、自社独自価値を合体させることによる、サービスの拡大のコンセプトにある。
顧客視点を持て、と言われてもなかなかできないのが現実だと思うが、常に「もし自分が顧客だったら、雑誌売り場が減ると不便だな」などと、顧客の立場に立った、顧客行動の疑似体験をすることで、顧客が感じている「未充足ニーズ」を発見できるのだ。
わからないことは顧客に聞け。物理的に顧客に尋ねるのではなく、顧客になりきってみることで発見できることがあるのである。
■目次
… 1. 特集 「セブンイレブンの雑誌取り置きサービス開始に学ぶオムニチャネル時代の顧客視点」
… 2. コラム 「流行る今時の商店街のポジショニングとは?」
… 3. ビジネス書紹介「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代三浦展氏の今を読み解くキーワード集」
… 4. 時間術「データも本も行間を読め!」
… 5. 著作・イベントのお知らせ
… 6. 編集後記