コンビニ3強に学ぶ市場攻略戦略と水平思考=理央周

コンビニ3強に学ぶ市場攻略戦略と水平思考

コンビニエンスストア業界が、新たな局面に向かっている。

7月26日付の日経MJのトップ記事に載っていた、2016年度のコンビニ調査によると、国内全店売上高は、対前年比3.1%の増と、7年ぶりの低水準。

そんな中で、セブンイレブン、ローソン、ファミマの3強時代になり、この3店舗で9割近いシェアを占め、なかでも、セブンイレブンは40%を超えた、とのことだ。ファミリーマートも、サークルKを統合し、業界を取り巻く環境も変化している。

業界が変化しているということは、事業のコンセプトも進化させなければ、将来の競争に勝てなくなる。「うちの会社はコンビニエンスストアだから」という固定観念にとらわれず、広く、フレキシブルな発想と、スピードもった対応が必要となる。

【コンビニ各社は何を持って変化に対応しているのか?】

当該市場の伸びが鈍化し、飽和に近づいていく場合、新規市場に既存商品を当てていく、開拓戦略をとるか、既存市場に、新規商品を当てる、開発戦略をとることが、セオリーになる。

記事にもあるように、シニアの新規顧客層を取り込むために、個食を充実させ、コミュニケーションをとるのが前者で、ローソンがゴディバのスイーツを導入し、既存顧客にアピールするのが後者になる。

各社とも、この攻略戦略を明確に、実践している。中でも、食品に限らず、セブンイレブンが、シックの使い捨てカミソリ「エクストリーム」を開発し、「すぐに使いたい」という自社顧客の需要に対応したり、ファミマがカネボウと開発したセルフ化粧品も、女性の需要に見事に対応している。

ここで特筆したいのが、伸びている女性やシニア市場に対応している点と、「コンビニなのだからシニアの人は来ない」という固定観念にとらわれず、戦略を立てている点にある。

このような視点を踏まえて、ファミマが LINEと組んでのCRMの一環で、「顧客別クーポン」を発行することで、きめ細かく各個のニーズに対応している点など、 IT活用での顧客志向が目につく。

こういった新しい一手を打つ際に、大企業においては、意思決定の複雑さから、スピードが落ちることも多々あるが、コンビニ3社に関しては、スピード感持って実践していることが見受けられる。

【中小企業はコンビニ3社に何を学ぶべきか?】

堅調に売り上げを推移させ、企業努力を続けるコンビニ3社に、中小企業は何を学ぶべきか?

まずは、市場の状況を把握し、顧客層と自社製品を整理整頓し、攻略戦略を立案することにある。

コンビニ業界も、数年前までの好調さを持続することが困難になり、ファミマとサークルKの統合により、メガ・コンビニの時代になった。その中で、通常の施策だけでは、当然競争に勝つことができないため、常に市場の先手を打つために、上記のように、新製品を新規市場に向けて出している。

しかし、やたらめったら出せばいいか、というわけではなく、セブンイレブンのように、消費者の目的買いを超える何かを開発するために、製品開発をしたり、伸びているシニア層に向けて何ができるのか、を試行錯誤して、実践しているのだ。

もう1点は、柔軟な発想での顧客目線を持つこと。

市場が細分化し、ITの進化により、メディアやハードウエアも細分化すると、消費者の志向が多様化し、ロジカルに市場を定義するだけでは、不十分になる。

論理的に、フレームワークを駆使して、考えをまとめる垂直志向に、感覚的、帰納的に、アイディアを出し、企画にしていく水平的アプローチで、垂直志向で除外された、周辺の需要を取り込むことが必須になる。

水平思考の出発点は常に、「顧客ならどうするか」を考え、そのさらに半歩先くらいを提案すること。

顧客満足を超える、顧客歓喜を創出するには、常に顧客視点での観察が必要になるのだ。

■目次

… 1. 特集 「コンビニ3強に学ぶ市場攻略戦略と水平思考」

… 2. コラム 「もう一つの名古屋メシ「手羽先」」

… 3.  ビジネス書書評「マーケティングのススメ 21世紀のマーケティングとイノベーション」

… 4.  ワンポイント時間術「MBA的発想は必要か?ポストMBA思考」

… 5.  著書・イベントのお知らせ

… 6. 編集後記

2.コラム: もう一つの名古屋メシ「手羽先」

記事の新規購入は2023/03をもって終了しました