社会で生き残るために大切なこととは・・・

社会でできるだけ長く生き残るために大切なことは何でしょう?

答えは「変化に対応すること」です。

ダーウィンは、著書『種の起源』の中で、「生き残ることのできる生物の種族は、最も力の強い種族ではなく、環境の変化に対応できる種族である」という考えを示したといわれます。

社会においても、長く続いている商品を見ると、基本的な価値をしっかり保ちながら変化に対応し、進化を続けています。

45年前に生まれ、世界で累計販売食が400億食を達成した「カップヌードルブランド」。

ある時は具材を増やしたり、カップを紙にしてエコ化したりして進化を遂げてきました。1914年に長野県軽井沢に開業した温泉旅館は、「星野リゾート」として日本各地に新しいタイプの宿泊施設を次々と展開しています。

『ガリガリ君』も時代と共に進化しています。

キャラクターを見直したり、時代に合わせて味を少しずつ変えたりしています。発売を開始した当初は、甘いものが好まれていました。しかし、少しずつ人の嗜好が甘さを抑える方向に変わってきているため、『ガリガリ君』も少しずつ甘味を抑えたり、味を薄くしたりして、今はさっぱりとした甘さになっています。

アイスの硬度も変えてきました。『ガリガリ君』は、アイスキャンディの薄い膜(シェル)を作り、中にかき氷の粒が入っているのが特徴ですが、初期の頃よりも、氷の粒を小さくしています。柔らかい食べ物を求める嗜好が強くなっているためです。また、着色料も、現在は天然着色料を使うようになっています。

さらに、シリーズ化され、2か月おきに新製品(新フレーバー)を販売しています。因みに、今年の2月には、信玄餅を作らせて頂き、お陰様で売れ行きも好調です。

『ガリガリ君』は、時代に合わせて常に変化を続けてきたからこそ、今に続いているといえるでしょう。

なぜ、進化しなくてはいけないのでしょうか。わかりやすい答えは、ダーウィンが提示したように、自然を見ればわかります。

地球環境はどんどん変わっています。環境が変わったことで生物は進化してきたのです。地球環境が変わると、モノの価値も変わります。今、日本では、ガソリンよりも水道水のほうが断然安いですが、地球の砂漠化が進むと、今度は水が貴重になってくるでしょう。

水を大切にしなければ、人は生きていけなくなります。

生物も人も商品も、日々変わっていく新しい環境に適応していかなければ、生き抜いていけないのです。

私はずっと商品開発を手掛けてきましたので、どうすれば、新しい時代に適応する商品を作れるかについて、お話ししたいと思います。

時代に適応するためにいちばん大切なのは、「変化を見抜く」ことです。「変化に気づく」ことと言ってもいいでしょう。では、どうすれば、変化に気づけるか。

わかりやすいのは、現場の定点観測です。同じ場所をいつも見に行くと、「昨日との違い」に気づけます。

私が第一線で商品開発を手掛けていた時は、コンビニを「5店舗」決めて、必ず、そこだけは毎月行くようにしていました。1店舗だとわからないことも、5店舗だと「あれ、こっちも同じ変化がある」と、傾向が見えてきますから、複数店のほうがいい。

毎月通っていると、何気なく見ていては気づかないものが見えてきます。「あれ、ここにあったはずのものがなくなって、新しい製品が入っている」「スイーツの棚の占める割合が広がった」など多くの気づきがあります。

本やインターネットを見ているだけではわからないような、時代の流れを肌で感じたり、目の当たりにできます。

テレビを見ているだけでも、わかることはたくさんあります。

どんな傾向の芸能人が今はウケていて、どんな人の人気がなくなってしまったのか。あるいは、最新のCMの傾向として、「以前は、犬が登場するCMが多かったけれど、最近は猫が多いな」などが見えてきます。

テレビCMだけをずっと見ていても勉強になります。人気のあるCMもあれば、なぜか頭に残らないCMもある。大切なのは、「違いはなんだろう」と問いかけることです。漠然と見ない。能動的にテレビを見る。その違いに気づけると、時代を読めるようになります。

赤城乳業には『ガリガリ君リッチ コーンポタージュ』というヒット商品がありますが、商品開発を手掛けた社員は、テレビであるお笑いのタレントが「コーンポタージュ嫌いな奴っていないよな」とつぶやくのを聞いて、開発を思いつきました。

「今はどんな時代なのか」をつかむことが、売れる商品開発につながります。

もうひとつ、社会の変化に気づくために私がずっとやってきたのは、「新聞」を読むこと。隅から隅まで読みます。すると、昨日と今日の違いに気づくし、社会の動きがわかる。

「なぜ、こうなっているのだろう」という視点を持ちながら読むと、社会がどういう方向へ行くか、予測もつくようになります。

社会の予測は、商品開発には欠かせません。

たとえば、コンビニが増えてきた頃、当時の井上秀樹社長が、「まもなく、コンビニが小売店に取って代わるだろう」と予測を立てて、いち早く、コンビニ展開を始めました。『ガリガリ君』もコンビニへの展開があったからこそ、これだけ売れているといわれています。

若い世代は、インターネットに慣れているので、最初、新聞を読むのは難しいかもしれません。その場合は、見出しを拾い読みするだけでもいいでしょう。

それだけでも、毎日見ていると、世の中の流れがわかってくると思います。慣れてきたら、アンテナに引っかかった記事だけ読んでみる。もっと慣れてきたら、少しずついろいろな記事を読むようにするといいでしょう。

習慣化することで自然と変化に気づけるようになりますので、早速始めてみてください。