社会に出ると、上司から「予想外の」あるいは「理不尽な」ひどい評価を受けることがあります。これは、どんな会社にも当たり前にあることなのです。このことをよく覚えておいてください。
当たり前のことだと知っておけば、深く傷つかずにすみます。
人は、子ども時代からずっと、他人からの評価にさらされます。
小学校時代、通信簿をつけるのは、「自分」ではなくて「先生」。つまり他人です。中学、高校、大学までずっと同様です。さらに、共通しているのは、学生時代の評価は、割と納得できることが多いという点です。
国語のテストで0点を取ったら、通信簿の評価が「1」だった。「まあ、仕方ないな」となんとなく合点がいく。100点満点中100点を取ったから、通信簿の評価は「5」だった。「やっぱりね、徹夜で勉強をした甲斐があった」と胸を張れる。
100点を取ったのに、評価は「1」だった、ということは、出席日数が足りないなど特別な場合を除いては、基本的にはないでしょう。
ところが、社会に出ると変わります。学生時代には想像もできなかったことが起きます。自分は「100%うまくやった」と思い、上司も「よくやったな」と褒めてくれたのに、あとになって「なぜ、あんなことをやったんだ!」と怒られることがあります。
たとえば、かつて原油価格が右肩上がりの時代に次のようなことがありました。
需要が多く、入手困難を極めていた時期に、知り合いのある商社マンがコネクションを使って、何とか大量に原油を購入する契約を結ぶことができました。
この時、会社側は「よくやった!」と褒め、高く評価してくれたそうです。
ところが、翌年、原油価格が暴落。会社としては、契約した当時の価格で原油を買わなくてはなりませんから、大きな負担になります。そのため、「なぜ、契約したんだ!」と責任を追及してきました。当人からすれば、「手の平返し」の仕打ちです。
原油価格が暴落したのは、その商社マンのせいではないし、普通に考えれば、おかしな話です。ですが、こうしたことは、社会に出るとごくごく普通に起こります。
しかも、「私のせいではありません」と言ったところで、聞き入れられず、そのまま評価に直結してしまいます。もちろん、低い評価です。
社会にはそういう面があります。
経験がなく、まだ、社会についての知識が浅い若手社員の場合、このようなケースに直面すると、「理不尽じゃないか」と腹を立てたり、「自分はダメだ」と落ち込んだりして、なかなか立ち直れないでしょう。
しかし、腹を立てたり、落ち込み続けたところで、何にもなりません。
では、どうすればいいか。
2つの角度から思考することです。まずは、「誰のために働いているのか」を考えてみる。「親」のためでしょうか。それとも、「会社」や「上司」のためでしょうか。
人によって、考え方は違うかもしれませんが、基本的に「働くのは自分のため」だと考えたほうがいいでしょう。自分のためなのですから、仕事上で直面したあらゆることを、自分の糧としてとらえます。そして、会社は他人が自分を評価するところであり、それは、自分ではどうにもできないことだ、と割り切ることが大切です。
もし、社会に出て自分で自分を評価したいと思うのなら、会社を興すしかありません。
もうひとつは、「自分として満足いく仕事ができたのかどうか」を考えてみること。一生懸命仕事に食らいついて、自分として満足しているのなら、胸を張っていましょう。
ただし、自分で自分を評価する時に気をつけてほしいことがあります。
「うぬぼれない」ことです。
うぬぼれると、人は努力を怠ります。努力を怠ると、成長が止まります。すると人生の面白みがなくなります。昨日より今日、今日より明日、ほんの少しでも成長を実感するところに人生の楽しさはあります。
働き始めた頃、私はまだ青くて、生意気でしたので、仕事をしている同年代の人を見て、「私がいちばん先頭を走っている」と思い込んでいました。入社2年目、ちょうど『BLACKEY』(現在の『BLACK』の前身)を作っていた頃です。
若くして新商品開発を任された私は、誰よりも仕事ができると思っていました。ところが、ある時、「自分と同じレベルの仕事をしているな」と思う人が現れました。よくよく仕事の内容を聞いてみると、自分より難しい仕事を任されていて、実ははるか先を走っていることがわかりました。
私はうぬぼれ、油断をし、自分よりも先に人がいるとは思ってもみなかったのです。アイデアが出なくなったのはこの頃でした。
もし、会社で仕事をしている時に、「この人は、自分と同じくらい仕事ができるな」と思ったら、「いや、この人より自分のほうが能力は下だ」と考え直すことです。もし、「この人は、自分もよりも少し仕事ができるな」と思ったら、「自分より、はるかに能力が高いな」と考え直すことです。そうすれば、「自分は仕事ができるのかも」という勘違いを防ぎ、自分を甘やかさずにすみます。
いい意味でも、悪い意味でも、意外とわからないのは、自分自身のことです。
長い間仕事をしていると、ある時、とんでもない斬新な発想をしている自分を発見して、自分自身に驚くことがあります。それが、いい仕事へとつながります。
周囲の評価を気にせず、うぬぼれず、一途に仕事をしていると、いつか「とんでもない斬新な発想をしている自分」と出会えるのです。
私にとってそれは、『ガリガリ君』の色を「地球色」にしようと思い立ったことでした。
みんなに愛される色は何か。そう考えた時、地球のイメージが浮かんできました。地球で印象的なのは、やはり空と海、スカイブルーと紺碧の海の色です。そうして今では〝ガリガリブルー〞とも呼ばれている青い色に決めました。
これも、周囲の評価を気にせず、うぬぼれず、一途に考えた結果だと思っています。