「出会う人は皆、人生という物語の重要登場人物」~辻野晃一郎の人生サプリ(第1回)

読んだ人が元気になれるサプリのようなコラム。朝のしんどい満員電車で、少し眠くなってきたランチの後に、上司に叱られた夕暮れ時に、何だか眠れない夜に。。。あなたに届ける人生サプリ。

出会う人は皆、人生という物語の重要登場人物

「自分の人生が一つの物語だとすれば、一生の中で出会う人達は、皆その物語を構築する重要な登場人物である。仮に、どんなに悪役や脇役に見える人がいたとしても、それぞれの登場人物には大切な役回りがある。誰一人欠けてはいけない」

mineの立上げにお声掛けいただきありがとうございます。さまざまなネットメディアが乱立する戦国状態の中、上質なネットメディアとしてユニークな存在となることを期待しています。また、そのために私も出来る限りご協力出来ればと思っています。

さて、mineへの連載を始める上で、何を書いたらいいのかとしばらく考えていました。結論としては、他ではあまり書いていないmine向けのオリジナルの内容で、読者の皆さんの日々の仕事や生活におけるちょっとしたヒントや糧になるようなものをご提供する内容にできればと思い、「明日からの毎日に役立つヒント」ということを念頭に書いていくことにしました。

そうは言っても、私自身、さまざまな挫折や失敗を繰り返しながら、未だに試行錯誤で前進を続けているような毎日ですので、私自身の赤裸々な体験談や、それを基にした独断と偏見、日々のなにげない気付き、といった話が中心になるかと思います。どうかよろしくお願いします。

まず、初回からしばらくは、ネットで繰り返し引用されている私の発言やコメントをいくつか取り上げてみます。今回は、冒頭に掲げた、

「自分の人生が一つの物語だとすれば、一生の中で出会う人達は、皆その物語を構築する重要な登場人物である。仮に、どんなに悪役や脇役に見える人がいたとしても、それぞれの登場人物には大切な役回りがある。誰一人欠けてはいけない」

を取り上げてみました。ツイッター等で「語録」のようによく引用していただいているフレーズになりますが、これは、私が初めて上梓した2010年の書籍『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮社)の「エピローグ」に書いた一文が出処になっています。

人は、生まれてから死ぬまでの間に大勢の人達に出会います。根拠は不明ですが、以下のサイトの記事には、「人生80年として、何らかの接点を持つ人が30,000人。 同じ学校や職場、近所の人が3,000人。親しく会話を持つ人が300人。友人と呼べる人が30人。親友と呼べる人が3人」とあります。

http://lealta.jp/encounter/

もちろん、人によってこれよりも多かったり少なかったりするわけでしょうが、いずれにせよ、今現在の地球の人口が73億人といわれる中にあって、生涯で出会える人は非常に限られているわけです。

私は日々、「人生には偶然は無い」と信じて生きています。すなわち、些細なことから大きなことまで、嬉しいことから悔しいことや悲しいことまで、自分の身の回りに起きるありとあらゆることは全て必然である、という考え方です。

世の中には、「こんな人と出会わなければ良かった」、とか、「こんな目にあって大変な思いをした」、ということが沢山ありますが、どんなに嫌な人と出会い、嫌な出来事に見舞われても、それらのすべてに意味があると解釈することによって人生を前向きに生きることが出来ます。

「人生は出会いが全て」ともいいます。また日本語には「袖振り合うも多生の縁」や「一期一会」という言葉もあります。いい人との出会いに恵まれれば人生は豊かになるでしょうし、悪い出会いで人生を狂わせてしまうこともあるでしょう。

実際、自分の人生を振り返ってみても、さまざまな人との出会いが自分の運命を決めて来たといえます。まずは両親との出会いです。両親のもとに生まれなかったら、今の自分の人生が存在しないのは当然です。その他、兄弟姉妹、学校の先生、友達、就職した会社の人達、取引先の人達、旅先で出会う人達、電車や道端で因縁を付けて来た人達、等々、すべてが自分の人生という物語の中の貴重な登場人物です。中には、たとえば「三国志」にあるように、登場してから2、3行で首を刎ねられて終わるような人もいるでしょう(笑)。でも、どんな些細な役回りであっても、人生で出会う人には必ずその人と出会う理由があるのです。

まだ会社勤めをしていた頃、私は何度かとんでもなく嫌な上司に出会ったことがあります。例を挙げ出すときりがないのですが(笑)、後から思えば、その中の一人から受けたひどい仕打ちのおかげで後の会社人生が大きく拓けた、という体験があります。

まだ若い頃に出会ったその上司は、いわゆる「口八丁」で、弁は恐ろしく立つものの、まったく行動が伴わない人でした。業を煮やした私は、ある重要会議の席でその上司の弁論に正面から異議を唱えてしまいました。直属の部下に面目を潰されたその上司は激高し、私は直ちに職場を追われて異動先を自分で探す羽目になりました。その時には、その理不尽な上司のことを許せない思いでしたが、しかしそのお陰で、結果的に私は本社の中枢に異動することになり、珠玉のような優れた人達と大勢出会う機会に恵まれることになりました。それがその後の私の会社人生を大きく好転させるきっかけになったのです。

どうせ出会うのであれば、出来るだけいい出会いを求めるのが人情です。出来るだけプラスの影響を受けるような人達と付き合って、自分をいつもポジティブな状態にしておくことは大切です。世の中には、職場や上司の悪口を言うのが好きな人がたくさんいます。「ディスる」という言葉もありますが、飲みに行っても愚痴や悪口が好きな人達が巷には溢れています。できるだけ、そういう人達とは距離を置いて付き合わないことです。

いい出会いも悪い出会いも、自分の人生における出会いの意味を謙虚に受け止めながら、充実した人生を送りたいものです。人生には、無駄な出会いや無駄な経験など、何一つないのですから。



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