「人生なんて思うようにならないのが当たり前」~辻野晃一郎の人生サプリ(第2回)

読んだ人が元気になれるサプリのようなコラム。朝のしんどい満員電車で、少し眠くなってきたランチの後に、上司に叱られた夕暮れ時に、何だか眠れない夜に。。。あなたに届ける人生サプリ。

人生なんて思うようにならないのが当たり前

「多くの人は、うまくいかないことがあると『なんで自分だけこんなについてないんだ』とネガティブ思考に陥りますが、そもそも人生なんて思うようにならないのが当たり前。もし、とんとん拍子に物事が運んだら、人間は必ず傲慢になって、自信過剰になってしまうでしょう」

第一回目のメッセージをお読みいただきありがとうございました。少しでも多くの皆様に読んでいただけると、書く方としても大きな励みになります。

今回は上記を取り上げてみました。これも時々ネットなどで引用していただいているフレーズです。何かのインタビューの時にお話しした内容の一部だったかと思います。

私達は、人間としてこの世に生まれてきたからには、「自分は何のために生まれて来たのか」とか、「人生とは何か」とか、「自分の天命はなんだろう」などいうことについて、多かれ少なかれ考えたり悩んだりするものです。そして、このような問い掛けには、なかなかすっきりとした答えは見つかりません。きっとその答えは、そうして考えていても見つかるものではなく、人生そのものがその答えを見つけるための長い旅のようなものだからなのでしょう。

死ぬまでにその答えが見つかればいいですが、見つからないまま人生を閉じてしまうこともあるでしょう。生き方は人それぞれですから、こういうことに無頓着で日々おもしろおかしく生きることが出来たらそれもひとつの生き方です。しかし、見つかろうが見つかるまいが、その答えを常に探し求めながら生きる、という基本姿勢は持ち続けた方が、より充実した人生を送れるように思います。

ところで私達の日常では、何事も予定通り、計画通り順調に進めば、それに越したことはない、と願うのが普通です。入りたい大学の入学試験に合格したり、入りたい会社に就職できたりすれば、まさにその瞬間には人生の勝ち組の仲間入りをしたかのような大きな達成感や喜びに包まれることでしょう。それはそれで大変に喜ばしく素晴らしいことです。しかし、だからといって希望の大学や会社に入れなかったとすれば、それは不幸なことなのでしょうか。失恋などもそうです。その時にはただただ悔しく、悲しくて、不幸のどん底にいるような気分になる出来事に見舞われても、後から考えると、それが実は人生の転機になったり、それこそ自分の天命を見つけるきっかけになったりすることは往々にしてあることです。

笑われるかもしれませんが、私の場合には、人生の最初の大きな挫折、屈辱は大学受験に失敗したことです。模試などでは常に合格圏内だった志望大学の入試に二年続けて失敗しました。一度目はともかく、二度目に失敗した時にはまさにもう人生の終わりのような感覚でした。今のようにインターネットなど無かった時代、合格発表は大学構内の掲示板に受験番号が貼り出される、という形でした。胸をドキドキさせながら掲示板を見に行って、そこに自分の番号がなかった時の落胆や屈辱感は今でも鮮明によみがえります。合格した人達が胴上げされたり、家族で喜び合ったりしている光景を尻目に、そっと発表会場から立ち去り、近くの公衆電話から両親に不合格を通知した時には、情けなくて悔し涙がこぼれました。

まあ今から思えば、こんな挫折は挫折というほどのことでもなく、他愛のないものだったと思いますが、もしあのまま順調に志望大学に合格していたら、自分自身を過信してどこまでも傲慢になっていたかもしれません。もともと自信過剰だった自分には、あのタイミングでガツンと一発やられるくらいがちょうどよかったのでしょう(笑)。

私は、どうにも辛くなったり落ち込んだりした時に取り出して眺める古い本があります。Morgan Scott Peckという米国の精神科医が書いた『The Road Less Traveled』(邦訳:『愛と心理療法』創元社、1987年)という本です。

「人生とは困難なものである」という書き出しで始まり、「これは偉大な真実、最も大きい真実の一つである。ひとたびこの真実を悟ればそれを超越できるという意味で、それは偉大な真実なのである。一旦この真実を理解して本当に受け入れるならば、人生はもはや困難なものではなくなる」と続きます。

「大抵の人たちはこの心理を充分悟ってはいない。むしろ彼らは、たえず自分の問題、重荷や障害が大きすぎると、大仰にあるいはひっそりと嘆いている。まるで、人生は総じて楽なものだ、楽であるべきだというように、である。自分が直面している困難は、どこにでもあるような不幸なことではない。どういうわけか、いわれもなく、よりにもよってこの自分に、あるいは自分の家族、部族、階級、国、民族、あるいは人類に課せられた不幸なのだ、と大声で、あるいは小声で言う。私はこのような嘆きがよくわかる。私も人並みに同じように嘆いてきたからである」

この本にあるように「人生とはそもそも楽なもの、楽であるべき」という前提に立つと、ほんのちょっとした嫌なことでもイライラし、どんどんストレスが溜まっていくでしょう。思い通りに行かないことがあると「何故、よりによって自分ばかりがこうもついていないんだ」と世を呪うようにすらなるかもしれません。しかし逆に、「そもそも人生とは困難なものである」という前提に立って開き直ってみると、それとは正反対に、ほんの小さなこと、ちょっとしたこと、他人からの思いがけない親切などが、大きな喜びや深い感謝の気持ちに繋がっていきます。

人間なんて、実に弱くて身勝手なものです。物事が順調に進んでいる間は、自分の能力を過信して傲慢になったり威張り散らしたりしている人も、ひとたび事がうまく行かなくなると、うろたえて世を儚んだり、他人に責任転嫁したりするものです。きっとあなたの回りにも、そんな人の一人や二人はいるはずです。

たった一度の人生です。「人生とは困難なもの」と悟り、「想定通りになんかいかないからこそ人生は楽しく面白い」と開き直りましょう。日々身の回りで起きる出来事に一喜一憂するのはほどほどにして、物事がうまく行った時には、「たまたまラッキーだった」「人様のお陰」と天や周囲の人々に感謝し、うまく行かなかった時には、一人静かに酒でも飲みながら、何がいけなかったのかを冷静に反省し、「次こそは絶対にうまくやってやろう」と新たな闘志を密かに燃やしているくらいがちょうどいいのです。

たとえ思い通りにならないことがあっても、Life is adventure, so don't worry and be happy!