権威と権力(天皇と殿様の違い)~武田邦彦集中講座 日本の超重要問題(1)

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◆なぜ日本は2000年も前に「主権在民」「民主主義」という考えがあったのか

日本は不思議なことに、「世界で日本だけ」というのが特に多い国です。その一つ一つが独特の日本文化を創り出していますし、逆に言えば、「日本独自のなかで生活してきた日本人」が、それ故に外国を理解できない理由の一つにもなっています。

このシリーズではまず、「権威と権力」というむつかしいことに挑戦してみたいと思います。「権威と権力」を別の表現を使えば、「天皇と殿様」といってもよいでしょう。またこのシリーズでは「日本の天皇と中国の天子の違い」にも触れてみたいと思います。

日本の神話、古事記に書かれている「日本社会」は、日本国民は天皇の「おおみたから」、つまり天皇の子供、もしくは天皇そのものと位置付けられています。つまり日本では、天皇=国民という考え方なのですが、国民は数が多いので、天皇が日本人全部の代わりをするという感じです。つまり、「日本国民全部」が天皇陛下の後ろにいるということで、天皇を尊敬し、深々と頭を下げるのは、日本国民全部に頭を下げることでもあります。

日本社会では相手に向かって頭を下げるのが習慣となっていますが、自分の前に一人がいても頭を下げるのですから、それが「国民全部が自分の前にいる」となると「深々と頭を下げる」ということになり、それが私たちが天皇陛下に敬意を払わなければならない理由なのです。

人間は抽象的なことを具体的に意識することはできません。そこで、宗教などでも「神様の形を作ってはいけない」=偶像崇拝禁止 というのが原則ですが、どうしても「観音様」とか、「阿弥陀仏」などの形を作らないとなかなかむつかしいのです。そこで日本社会では、「神様の子孫としての天皇」を制度化することによって「日本国民が中心」ということを具現化したのです。

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