「意見」についての重要な誤り~武田邦彦集中講座

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◆民主主義の時代、深く考えない民衆がメディアに踊らされ戦争をはじめた。

最近、テレビを見ていますと、小学生と思われる子供がその時の話題について、インタビューに答えて実に適切な答えをしています。最初は驚いたのですが、どうもその答えはその子の頭からでたのではなく。テレビなどで覚えた文章をそのまま口にしているらしいのです。

かつて、子供の答えは子供らしく、大人の答えは大人らしかったのですが、今ではすっかり同じになっています。また、台風や大雨の季節になると、テレビではインタビューに答える人が決まって「こんなの初めての経験です」と判を押したように発言します。この中にはテレビのアナウンサーが「こんなひどいの初めてですか?」と聞かれて、それに答える場合もあるでしょうが、テレビでしょっちゅう言われる言葉をオウム返しに答えているとも思われます。

今から120年ほど前、20世紀に入った世界の先進国は、それまでの「王政、貴族政治」から「民主主義」に転換しつつありました。その時代に発展したものに、「ブランド品、女性のメイク、そして戦争」でした。ブランド品の最初はフランスの女流デザイナーのココ・シャネルが最初で、「街角に出始めた女性」のための帽子、パンタロンなど、女性のメイクはマックス・ファクター(今では会社名になっているが)が女優にしたのが最初でした。また、スペインの奇才、オルテガ・イ・ガセットが「貴族は自分で考えたが、大衆は付和雷同するので戦争が増える」と予言し、その通りになりました。

つまり、貴族は「自立性、独立性」が求められたので、自分でじっくりと考えたのですが、大衆は「自分の意見は実は自分の意見ではない」というのに気が付かないので、メディアなどに踊らされて感情的になり、戦争が増えるという理屈でした。

明治時代の日本はまだ武家時代の風習が残り、半分貴族政でしたから、議論が沸騰し、最終的に決めるのも公爵、伯爵、士族などの貴族階級でしたが、大正時代を経て、力をつけてきた民衆が新聞などで知識を得て主導的な働きをするようになります。



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