旅で見つけた弁当「親子岩 潮風弁当/様似町」

 北海道様似町は、日高山脈を背負う太平洋に面した町。水産業、農業、酪農などが盛んで、なかでもツブ貝(真ツブ、灯台ツブ、アオツブ)のうまさは日本屈指。旬の時季にはわざわざ様似にツブを食べに行く人が多いが、私もその一人である。

 先月様似に行く機会があり、「ツブを食べよう、いざ!」と小割烹に向かった。数年前にその店で食べたツブがサイコーだったのだ。

 しかし店は扉が閉まり、玄関前に「ツブ貝はありません」の張り紙が。え?なになに??

ツブがない、って……。慌てて別の店に向かうも「ツブはありません」。3軒目も「ありません」「ありません」「ありません」・・・・。

 まだ諦めない。漁協に向かい、ツブはどこで食べられるか聞き込みに行く。

 しかし・・・ツブは様似町のどこにもなかった! えーーーーーっ、わざわざ5時間かけてやって来たのに! 

 理由は赤潮であった。根室、釧路、十勝、日高、北海道のほぼ半分の海域を襲った赤潮の被害は、ツブだけでなくサケやウニ漁師にも大打撃を与えた。赤潮のことは事前に知っていた。しかしツブの産地の様似、どこか1軒ぐらいはたべられる店があるだろうとタカをくくっていたのが間違いだった。また5時間かけて帰らなくてはならない。そんなぁ!

 しかし神は見捨てなかった。以前にも立ち寄った「工藤商店」に最後の最後に寄ったら、なんと様似産のツブを使った弁当が売られているではないか。「親子岩 潮風弁当」700円。駅弁風に掛け紙も付いている。

 ふたを開けると艶やかな炊き込みご飯の中にツブがごろんごろん。ニンジンやヒジキやゴボウとともに炊かれたそのツブめしは、なまらうまいんでないかい! 聞けば7年前からツブめしを販売しているそう。自家製、味付けもオリジナル。活ツブは食べられなかったけれど、十分に満足だ。

 工藤商店はスーパーでもコンビニでも市場でもなく、魚も野菜も菓子も弁当も自家製加工品も売っている町に根付いた商店。駅弁でも道の駅弁でも空弁でもコンビニ弁当でもない、工藤商店のツブめし。こんな店が近所にあったら毎日通ってしまうだろう。

 これからも、いつまでも潮風弁当を作ってください。また食べにいくぞ!