「旅がらす」と「旅鴉の唄」

 群馬県にはとても親しみをもっている。

 なぜって、利根川が流れているからだ。

 利根川下流の千葉県の町で生まれ、幼いころ利根川で遊んだ思い出が多く残っている。利根川には人一倍思い入れがある。群馬県は大河が生まれた母なる土地、どこかあこがれる。

 群馬名物といえば上州のからっ風。日本海側で雪や雨を降らせ、カラカラに乾燥した状態の大気が県境の山を越えて吹きおろす北西風で、別名・赤城おろしともいわれる。

 もうひとつ、上州といえば世に名だたる侠客の出身地であることで知られる。大前田英五郎、国定忠治、木枯し紋次郎……、紋次郎は小説の主人公だが前者2人は実在の人物だ。

 前橋の銘菓「旅がらす」はそんな大親分たちを思わせるネーミング。確かに1枚ずつ菓子が包まれた包装袋には、”上州長脇差”が描かれており、まんざら間違いではないだろう。上州長脇差とは別名”上州の一本刀”といい、武士の二本差しに対して刀一本だけを帯同するヤクザ者のこと。国定忠治も一本刀だった。

 袋を破ると中には丸いせんべいが。醤油を塗った米粉のせんべいではなく、炭酸せんべいやゴーフルなどと同じ小麦粉が原料の甘味せんべいだ。薄いせんべいは2枚重ねで、間にミルククリームをサンドしている。どこか懐かしい味わい。食感がよく、パリッとした歯ざわり、音、軽さが実に小気味よい。コクがありながら重くない。1枚を食べ終えるとまたすぐに食べたくなる。

  シンガーソングライター・山木康世の曲に『旅鴉の唄』がある。

     たった一度の人生を これが運命(さだめ)とあきらめ…

     がんじがらめの世の中を 渡り歩く旅鴉…

     時の流れに身をまかせ 水の流れに身を映し…

 侠客たちの心境を歌ったわけではないだろうが、どこか通じるものがある。

一度聴くとまたすぐに聴きたくなるところも共通している。

 旅がらすと旅鴉。機会があったら食べてみて、聴いてみて。



■旅がらす

旅がらす本舗清月堂

群馬県前橋市新堀町399-6

フリーダイヤル0120-33-1147

■山木康世オフィシャルHP

https://yamaki-club.com/