成果上がらぬ安倍外交 ─プーチンにしてやられる?─

 "売り物"だった安倍外交が、このところさっぱりだ。日米関係は貿易不均衡問題に絡み自動車、農業などで再びアメリカが攻めてくる可能性が濃厚だ。拉致問題、朝鮮半島情勢との関係も米朝首脳会談に先行され日本は置き去りにされてしまった。中国とは経済で弱っているのでかつてほどギクシャクしていないが、ITやサイバー問題などでは遅れをとり将来が心配されている。近隣の東南アジアとは政治的にも人脈的にもかつてのような親密さがない。日本をアジアの代表とは見ておらず、むしろ中国への接近が目立ち始めている。

 そんな中で、最近の安倍首相は日露関係に熱心で日露平和条約を結び、安倍外交の成功のシンボルにしようとする姿勢が強くみられる。プーチン大統領と安倍首相の会談は24回を数え、日露の懸案である領土問題と日露平和条約の締結に異常なほど力を入れている。北方領土の四島返還は日本の外交当局が長年追求してきたテーマだし、ロシアと平和条約を締結することになれば、安倍外交の歴史的遺産にもなることは間違いないからだ。

 北方領土は北海道・北東沖、知床半島先に位置する択捉島(3167キロ平方メートル)、国後島(1490キロ平方メートル)、色丹島(249キロ平方メートル)、歯舞群島(93キロ平方メートル)の千島列島四島を指す。1875年の樺太・千島交換条約で千島列島は日本領、樺太をロシア領とする協定を結んだ。ところが、45年2月の米英ソによるヤルタ協定で千島列島をソ連に引き渡すことで合意したため、第二次大戦末期の45年8月9日にソ連軍が参戦し千島列島と北方四島を占領し約1万7000人の日本人を退去させた。

その後51年のサンフランシスコ講和条約により日本は千島列島を放棄したが、56年10月の日ソ共同宣言で「平和条約締結後に歯舞、色丹の日本引渡し」を明記。ただ平和条約は締結されないまま今日に至っている。

 安倍首相が北方領土に最も力を入れ、北方領土に経済協力をしてゆけば、プーチンも折れてきやすいとみてここ一年は協力を進めている。しかし、日本が経済協力を進めればプーチンが妥協するかといえば、したたかなプーチンは甘くはない。現に最近、四島の主権は渡さないと主張し始めている。色丹島の住民は現在約3000人(歯舞は0人)で、択捉、国後、両島で約1万3000人に及ぶといい、ロシア人の立退きは殆んど不可能なのだ。

 安倍首相が外交に熱心なのは国民も認めているが、結果として経済協力の手を差し伸べているだけで日本の国益には殆んど繋がっていないのが現実だ。安倍外交が訪問先でパスポートにスタンプを押してくるだけの”スタンプラリー外交”と皮肉られるでもあろう。

【財界 2019新春特別号 第486回】

◆お知らせ

・12月29日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』音源掲載

 ゲスト:東京大田区にある町工場・小松ばね工業会長の小松節子氏

 父の急死がきっかけで任された事業承継のみならず家の相続問題まで、様々な苦難を乗り越えてこられた当時のエピソードについてお伺いしました。

 次回は通常の時間に戻り、1月6日(日)21時30分より小松氏を引き続きゲストにお迎えし、専業主婦からビジネスの世界に飛び込み、積極的に社長として事業の舵取りを行なったことや、リーマン・ショックの影響で売上高が落ち込んだ時のチャレンジなどについてお伺いする予定です。

 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20190104

・1月15日 国際交流基金主催 中央アジア公開セミナー「中央アジアの歴史と文化を語る」のご案内

 本セミナーは中央アジア交流ミッションの一環として行なわれるものです。嶌はメンバーとして2016年から2017年にかけて実際に中央アジアを訪問しています。中央アジア5か国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)から専門家を1名ずつお呼びし、各国の歴史や文化についてお話しいただくものです。

 日時 2019年1月15日(火曜日)15時~17時30分

 会場 都立中央図書館4階 多目的ホール 東京都港区南麻布5丁目7─13

 主催 国際交流基金、東京外国語大学

 詳細は以下を参照下さい。

 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201812251

・日本ウズベキスタン協会創立20周年記念新年会開催 ~本場のウズベク料理やダンス、ドゥタール演奏を堪能~

 早いものでウズベキスタン協会を設立してから20年も経ちました。そこで20年経過の記念すべき新年会としてゲストに中央アジア古代史の第一人者である前田耕作先生をお招きして「シルクロードと玄奘三蔵」と題して華やかな世界の中心となっていた時代の中央アジアの歴史を30分程度、語っていただくことになりました。その後、前田先生と嶌が現代の中央アジアの存在意義と将来、日本との関係について対談(15分程度)をする予定です。

 ウズベキスタン大使館差し入れの本場ウズベク料理やウズベクダンス、ドゥタールの演奏をお楽しみいただけます。

 [日 時]2019年1月26日(土)13:30~16:30

 [会 場]日本プレスセンタービル 10 階(千代田区内幸町 2 ─ 2 ─ 1)

 [会 費]一般5,000円、会員及び同伴者3,000円、学生2,000円、留学生・外国人の方1,000円  

詳細は以下を参照下さい。

  http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20181218