■アメリカのINF破棄・東京五輪ボランティアの募集・東邦チタニウム株等
今年も恒例の『2019長谷川慶太郎の大局を読む』(発行:李白社、発売:徳間書店)を刊行しました。貿易戦争から覇権戦争へと様相を変えた米中の争いを中心に、人手不足とキャッシュレス化が襲う日本、右肩下がり経済のヨーロッパ、明暗が分かれたBRICSなどについて詳述しました。ネット書店や全国の大手書店に置いてありますので、ぜひご一読ください。
●アメリカがロシアとの間で結んできたINFを破棄する本当の狙いとは何か?
トランプ大統領は10月20日、遊説先であるアメリカ西部のネバダ州で記者団に対して「INF(中距離核戦力全廃条約)の合意を終わらせる」と語り、INF破棄の意向を表明しました。「ロシアがINFに違反しているためだ」というのがその理由で、「ロシアや中国が戦力を増強するのにアメリカだけが条約を順守することは受け入れられない。我々も戦力を開発する必要がある」とも付け加えました。
ミサイルについては射程1000キロ以下を短距離ミサイル、射程1000~5500キロを中距離ミサイル、射程5500キロ以上をICBM(大陸間弾道ミサイル)と呼んでいますが、INFでは短距離と中距離を対象として核ミサイルの開発や配備を禁じました。この条約がアメリカのレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長によって調印されたのは1987年、発効したのは翌1988年です。INFは発効から3年以内の短・中距離の核ミサイルの全廃を定めているのですが、この点で初の核軍縮条約でもあります。INFをきっかけに1991年にアメリカとソ連はICBMなどを削減するSTART1(第1次戦略兵器削減条約)を調印し、さらに1993年にアメリカと(ソ連の後継国家である)ロシアとが削減数を増やしたSTART2(第2次戦略兵器削減条約)を調印しました。
アメリカはオバマ前政権時代から、ロシアが小型の中距離ミサイルの開発・配備を行っているとしてINF違反を指摘していました。その違反に本格的に対抗するためにトランプ政権はINF破棄を表明したという見方もありますが、これは違います。