トランプ大統領は、どうして品性がなく落ち着きが感じられないのだろう。子供じみた敬礼をしたり、親指を立てて周囲の人々に挨拶する格好は、どうみても超大国の大物大統領の風情ではない。しかも、言うことがコロコロ変わったり、中国・ロシアとの関係も不安定だ。最近はEU、特にドイツとの間にまでスキ間風が吹いている。とにかく、トランプ大統領が登場してから世界が騒々しくなってきた。
そんな中で安倍首相は「トランプ大統領とはウマが合う」と言い、日本の安全保障は強固だと自信をみせている。万一の時はアメリカが日本へ駆けつけ守ってくれると信じているようだ。確かに貿易黒字などで多少の不満を述べているが、今のところ日本に圧力をかけている様子はない。ただ、いつ何を仕出かすか、わからないところもトランプ流なのだ。
しかもトランプ流は”圧力”をかけて自論を通そうとするため、各国との間に波風を立てる。中国が動いてくれないとみるや、6月末から圧力を強化する挙に出た。北朝鮮と取引のある中国の銀行に対し差し押さえに乗り出し「北朝鮮と取引する中国企業にはさらに制裁を行なう」とし日本と韓国にも同調するよう呼びかけた。
また7月初めに行なわれた20カ国首脳会議(G20)でも、安全保障や北朝鮮制裁などで中国・ロシアと意見が合わなかった。温暖化対策を目玉にしたかった主催国ドイツに対してはあからさまに非協力的態度を取った。メルケル独首相は、温暖化対策の枠組を決めたパリ協定にアメリカが留まるよう要請したが、環境問題を話合う首脳会議の時間帯に席を外したのだ。
こうしたトランプ大統領の”アメリカ・ファースト”、言い換えれば〝オレ様第一〟の方針と態度にヨーロッパ各国はあきらかにウンザリし始めている。米欧同盟は世界で最も固い絆とみられてきたが、ヨーロッパは少しづつ距離を置き始めている。5月のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議の後、メルケル首相とEU(欧州連合)のユンケル委員長は相次いで「EUの防衛、安全保障はもはや他人任せには出来ない」と語りアメリカ離れを示唆した。
またロシアの脅威にさらされるスウェーデンも2010年に廃止した徴兵制を来年から再導入する。スウェーデンは、ロシアが介入して来た時、アメリカはスウェーデンだけでなくNATO防衛にも真剣に向き合ってくれるかどうかわからないと見始めているためだ。
”同盟”という言葉は安心感を与えてくれるが未来永劫続く同盟はあり得ない。考えてみれば明治から昭和にかけて日本外交の柱だった日英同盟も半世紀と持たなかったのである。
【財界 2017年8月22日号 第453回】
※画像:5月に行なわれたタオルミーナサミット(サミット公式ページより)