ユニクロとZARAの商品戦略とターゲティングに何を学ぶべきか?=理央周

12月25日付の日経MJに、ユニクロとZARAの顧客層の違いと、その商品戦略の違いという、興味深い記事が載っていました。

今号では、ターゲティングの中でも重要な、消費者インサイトに焦点を当てます。想定顧客層が、何を考え、何を大事しにしているのか?について、掘り下げていきましょう。

特集【ユニクロとZARAの顧客層の背景にあるターゲット戦略と商品戦略】

フレームワークの復習:消費者インサイト

ターゲットを設定する際に、人の心の内面的(=心理的な切り口)を加えると、自社プロダクトの独自化点を、グサッとターゲット層に響かせることができます。

情緒価値に訴えることで選ばれやすくなりますし、お客様の行動を予測することで、見られている可能性が高い広告を選ぶことができ、より効率よく実施し、投資対効果を向上させていけるからです。

内面的な切り口のカテゴリーには、2つの重要な要素があります。

それが、

1.サイコグラフィック(=価値観):心理的に何を判断基準にするのか

2.ライフスタイル(=行動):普段どんな行動をとっているのかの2つです。

サイコとライフスタイルの2つの切り口は、属性(=デモ)や地域(=ジオ)と違い、数字など目に見えた形で把握できません。人が心で感じる情緒価値に最も深く関与する、という意味でとてもようになります。これらを「消費者インサイト」と呼びます。

インサイト(=Insight)を直訳すると、消費者が欲するモノやコトを観察し、探り当てていく力、という意味で「洞察力」となります。

顧客の立場に立った視点で訳してみると、顧客の深層心理にある「本音」と表現できるでしょう。

自社で規定したデモとジオのセグメントを合体させたターゲット層に、消費者インサイトを加え、より深く絞り込んでいき、顧客の心の中に近づくことで、マーケティング活動の投資対効果を上げていきます。

ユニクロ女子をZARA女子

記事には、ユニクロとZARAのブランドの服を好む、15〜39代の女性への、インターネットアンケートから見えてきた、結果をまとめたものが載っていました。

以下、記事から引用します。平均年齢はともの29歳。年代の分布に大きな差は見られず、独身や既婚の比率もほぼ同じ

一方で大きく異なったのが、職業や関心事。ZARA女子の40%が会社員だったのに対し、ユニクロ女子は32%。学生の割合は、ZARA女子が8%に対し、ユニクロが12%だった。

ユニクロ女子の関心事が、お菓子・食品・貯蓄だったのに対し、ZARA女子はファッションやトレンドだった。とあります。(引用は以上です)

ファッション性を重視するZARAと、ヒートテックなどの機能性を重視するユニクロの、商品戦略の違いが、明確にターゲットそうに出ています。年齢・性別は同じ層でも、職業や、さらにライフスタイルと価値観が、大きく異なるのが興味深いですよね。

ここで重要なことは、マーケティングにおいて重要な3つの要素、何を、誰に、どうやって、の「何を」すなわち、自社の売り物の戦略によって、響く顧客層が異なってくることを認識することです。

もう一点、年齢、性別、地域などだけの区分では、顧客想定をするには不十分だということ、そして、顧客層が何をしていて、何を大事にしているかという価値観で消費行動が変わる、ということを認識することです。

アラサーで都心に住んでいる女性、と分けただけでは、ユニクロもZARAも、自社のターゲットにアピールすることはできず、「どうやって」に関して重要な、顧客コミュニケーションが、ぼやけてしまいます。

記事にもあるように、ユニクロに響く女子たちは、機能性重視の「堅実派」、ZARAに響く女子たちは、おしゃれ上級者の「積極派」、となり、広告表現や、店頭でのアピールの仕方も、おのずと変わってくるはずです。

ユニクロとZARAから何を学ぶべきか?

では、この2ブランドの状況から、あなたは、何を学ぶべきでしょうか。

ユニクロとZARAは、そのビジネスモデルが、製販一体型のSPAで同じです。また、アラサー女性という括りでも、同じようなターゲット層です。

しかし、明確に特徴を出しているのが、その商品戦略です。どちらも、企業の戦略としては、規模の経済を生かした、コストリーダーシップ戦略で、いいものだけど、お値打ちな値段で勝負しています。

しかし、ユニクロは先進的で、かつ、高機能を持つ商品が特徴で、ZARAは、ファッション性の高い商品が特徴で、2社とも、これが顧客価値に直結しています。

まずは、自社プロダクトが、他と比較して、圧倒的な優位性を持っているかどうか、が最重要で最優先になります。あなたも自社プロダクトの優位性に、まずは最新の注意を向けましょう。

次に、想定顧客層が、消費者インサイトの面で、自社の製品戦略に沿っているかどうか、を、常にチェックする必要があります。

自社の売り物に響いている顧客層が、何を考え、どんな人なのか、という内面的なことは、リサーチや、顧客を観察することで見えてきます。

ターゲット層の心理と、自社プロダクトの狙いに違いがある場合は、顧客層に合わせて、自社プロダクトを修正するか、顧客層を再設定、追加設定するなどの、微調整が必要です。

ビジネスは、適者生存。市場に認められたものが生き残ります。

あなたも、明日からやってみてください。

*先月から、このメルマガの「特集」記事を、リニューアルしました。

この「売れる仕組み創造ラボ」のメルマガを、最新のマーケティング情報発信に加えて、あなたの仕事での成果につながる、内容と構成にしていくためです。

ピックアップするテーマも、最新の売れ筋情報、ヒット商品、マーケティング的な視点から見た新しさ、顧客視点に立っている事例、という基準で選定していきます。

特集の構成を、

- 市場で売れている商品やサービスの事例をピックアップ

- 「誰に、何を、どうやって」のフレームワークで解説

- マーケター視点の“ポイント”を指摘

- 自社に当てはめるにはどうすればよいのか

としていきます。

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■目次

… 1. 特集「ユニクロとZARAの商品&顧客設定」

… 2. コラム 「転職はいいことか?」

… 3. 時間術「スケジュール管理の手法」

… 4. 著作・イベントのお知らせ

… 5. 編集後記

2.コラム:転職はいいことか?

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