戦争を考える1冊 ウズベキスタンでの抑留秘話「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」

今年、戦後から72年を迎えました。本ブログでは折に触れてご紹介しておりますが、戦後70年を迎えた2015年9月末に嶌はソ連(当時)によって満州からウズベキスタンに送られ、タシケント市でオペラハウス「ナボイ劇場」の建設に携わられた航空工兵457名の方々の秘話「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」を角川書店より上梓しました。

戦争を深く考える時期

NHK等で連日、戦争関連の特番が放送されており、この時期は戦中、戦後に関して深く考えさせられる時期でもあります。本書は発売から2年弱が過ぎておりますが、今なお読んで感想を寄せて下さっている方もおりますので改めてご紹介いたします。

10年以上にもわたり取材

本書のテーマは嶌がNPO日本ウズベキスタン協会を設立した後、10年以上にわたり取材、調査してきました。実話のノンフィクションとするため、何度か挫折しながらも書き上げた思い入れのある本です。

中央アジア・ウズベキスタンで過ごした457人の日本人捕虜たち

戦後70年にあたった2015年は、様々な戦後史ものが出版されてきました。なかでも多かったのがシベリア抑留の悲劇です。本書に描かれているのは、シベリア抑留の悲劇とは違ったソ連での抑留生活です。中央アジアの収容所で過ごした457人の日本人捕虜が旧ソ連の4大オペラハウスの一つとなるビザンチン様式の「ナボイ劇場」をロシア革命30年にあたる1947年10月に完成させ、舞鶴港に帰国するまでの秘話を描いています。

ナボイ劇場

後世に日本の恥となるような建築は作らない

24歳の永田行夫隊長以下10~20代の捕虜たちは、厳しい収容所での生活にありながら「後世に日本の恥となるような建築は作らない。その上で、全員が元気に帰国する」ことを使命としてウズベク人と協力してウズベキスタン・タシケント市にて「ナボイ劇場」の建築作業に従事し、1947年10月に完成させました。その後、1966年に大地震が発生しタシケント市が全壊した時、ナボイ劇場だけは凛として悠然と建ち続け、中央アジアの人たちを驚かせています。

本書の主人公永田行夫様の当時(24歳)のお写真

日本をモデルにした国づくりを行なう中央アジア

そのことが91年に中央アジアの国々でソ連からの独立した際、日本をモデルにした国づくりをしようという動きにつながりました。中央アジアでは、この話は多くの人に知られていましたが、日本ではこれまでシベリア抑留の悲劇に隠れ、ウズベキスタンのオペラハウス建設の秘話はほとんど知られていませんでした。

ナボイ劇場の裏手に行くと「この劇場は日本人が建設し、完成に貢献した」という碑文があり、これを読んだ日本人は皆涙します。またウズベクの方々が毎週日本人墓地を掃除してくれています。

ナボイ劇場のプレート

満州抑留兵のもう一つの感動秘話

若き日本の抑留者たちの労苦と協力・和の精神が中央アジア全体に多くの親日国を作ったことにつながったことを知って頂き、満州抑留兵のもうひとつの秘話を広めていただきたいと思っております。ぜひ日本人論を再考し、感涙の一冊としてもぜひ多くの皆様にご紹介いただければ幸いです。

角川書店の通販サイトにてためし読みが可能です。

ぜひお時間がある時に以下リンクよりご覧くださいますようお願いいたします。

BOOK☆WALKER

また、本書は様々なメディアにて書評や本書の内容が紹介され、直近では今年の4月20日にフジテレビ系「奇跡体験!アンビリーバボー」にて本書をベースとした再現ドラマが紹介され、SNS等で多くの反響をいただいております

トップ画像は、「ナボイ劇場」完成当時の画像。記録映画「ひいらぎ」より

「ひいらぎ」が8月30日(水)新宿の平和祈念展示資料館にて上映されます。ご興味をお持ちの方は以下リンクを参照ください。

http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20170712