スターバックスのポイントプログラムに見る顧客戦略=理央周

スターバックスのポイントプログラムに見る顧客獲得&維持の戦略

スターバックス コーヒー ジャパンは、日本市場では初めてとなる、顧客へのロイヤルティ増進プログラムになる、「スターバックス リワードSTARBUCKS REWARDS」を9月20日より提供開始した。

スターバックス リワードは、プリペイドカードをスターバックスのホームページから、オンライン登録をするか、スマホにダウンロードした公式モバイルアプリに登録をすると参加できる、スタート呼ばれるポイントを集めて、その獲得数に応じてのサービスが提供される会員向けのプログラムになる。

内容としては、50円ごとの購入ごとに1スターというポイントが貯まり、そのポイント数に応じてプレゼントをもらえたり、限定商品が買える、キャンペーンに応募できる、というマイレージプログラムだ。

アメリカでは8年前からこのプログラムはスタートしていたとのこと。

CNet Japanの記事によると、

「先行してSTARBUCKS REWARDSを導入している米国では、1330万人いるスターバックス リワード会員による商品購入が、売上高の36%を占めており、モバイルの支払いは、米国内店舗における取引の30%を占めているという。将来のOne to Oneマーケティングに欠かせないツールという」(以上記事を引用)

といた具合に、早くからこのような顧客へのサービスによる、顧客離脱防止策、維持策を取っているのだ。

なぜ、日本での開始が今なのか?という点に関して、日本経済新聞の記事によると、出店戦略において、出店数が加速している中、サービスの低下や、混雑、価格の高さなどで、顧客満足度が下がっていることを受け、既存顧客へのサービスプログラムとしてスタートした、とある。

これまでの既存顧客へのサービスとしては、ドリップコーヒー2枚目は108円で買えること、期間限定だが、カフェラテでも2杯目をサービス価格で、行なっていたこともあったし、スターバックスカードに5000円の入金をすることで、お好きなドリンク1杯サービス、などのプログラムを提供していた。

スターバックスといえば、テレビCMなどマス媒体での宣伝広告をせず、店頭をブランド告知の場と捉え、デザイン性の高さと、居心地の良さ、バリスタの方々のおもてなしを、顧客サービスとしてきた。有名な事業コンセプトの「第3の場所の提供」だ。

ファストフードにおいても、新規顧客を獲得しようとすることは重要だが、顧客単価が低いこともあり、価格での差別化のみでの競争は体力勝負にもなり、ブランドの知覚価値の低下につながる。

その意味でも、既存顧客へのサービスを厚くすることにより、再来店を促していくことが必要なので、このプログラムの実施は、遅きに失した感は否めないものの、正攻法の戦略だと言える。

もう1点、顧客満足度が下がっている、ということに関して、確かに混んでいるので、入れないこと、座れないことも多いというイメージはある。

一方で、私も開始当日に、朝一番でスターバックスに立ち寄り、いつも通り、コーヒーを注文した。その際の店員さんの、このスターバックスリワードの説明は、シンプルで明瞭、いつもの笑顔での対応で、ファストフードとは思えない対応だった。

この点を考えた上で、未だにスターバックスの顧客親密度は高そうだ。

前述にあったような、リサーチというのは、顧客または顧客候補に「聞くこと」なので、顧客が感じていることの返答が返って来る。企業側としては、サービスの改善に取り組むべきだ。

しかし、100%リサーチ結果を盲信する必要がないことも事実である。その意味で、スターバックスにおいては、先述のサービスを中心に据え、間違っても、価格が高いからという声に対し、値段を下げるという選択肢を取らないようにすることが重要なのだ。

逆な言い方をするとすれば、高いという調査結果が出たとしたら、他者との比較での相対的な値段の高さ、と捉えるのではなく、「現段階での第3の場所の提供が、値段に見合っていないと感じられている」と捉え、従業員サービスの向上や、混雑の緩和などの施策で対応すべきであろう。

その意味も踏まえて、これからの、スターバックスリワードに期待したい。

■目次

… 1. 特集 「スターバックスのポイントプログラムに見る顧客戦略」

… 2. コラム 「頑な人はピエロになってしまった」

… 3.  時間術「まずは基本を固めよう」

… 4.  著作・イベントのお知らせ

… 5. 編集後記

2.コラム: かたくなで偉そうな人はピエロになってしまった

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