アパレルのレンタルサービスに見る、 シェアリングエコノミーの新しい形=理央周

今号では、アパレル業界での、服やファッション周りの「レンタルサービス」について、顧客価値とビジネスモデルの視点で考えていきます。

【アパレルのレンタルサービスに見る、シェアリングエコノミーの新しい形】

ファッションのレンタルサービスとは

今、若い女性を中心に、服や時計、バッグなどを借りられる、ネットでのレンタルサービスが人気です。

しかも、ただ単に服を借りる、というだけではなく、プロのスタイリストが、各アイテムをコーディネートし、自分に似合った服を選んでくれたり、着まわしの手法までもアドバイスをくれる、というサービスが付加されています。

なぜ服のレンタルサービスなのか?

ファッションのレンタルサービスが人気上昇している背景には、まずは、買わなくても月替わりなどで、比較的安価に服を入手できるという、「お値打ち感」があります。

また、レンタルなので、他の服に変更できたり、複数の服を入手できるという、「バラエティー感」も楽しめます。購入となると、値段とのバランスやサイズ、色をどれにするかを決めるまでに、悩んだりすることがありますが、レンタルだと、その点を気軽に考え、何種類も着ることができる、ということになります。それに加えて、インターネットで気軽に服を選ぶことができる、という「手軽感」も人気の広がりの理由でしょう。

業界大手の「エアー・クローゼット」のサービスを見て見ると、3つのコースが用意されています。どれも、返却期限なし、クリーニング料不要、スタイリストが服を選ぶ、という内容で、回数や付加サービスが、段階的についていきます。

ライトコースでは、月1回、3着まで借りられて6800円。

レギュラーコースでは、レンタル回数無制限で、過去アイデムの購入が可能、交換も無制限で、あんしん保証付、となり、月額が9800円、さらに、3ヶ月まとめて申し込むと28400円になるという、おまとめレギュラーパックが用意されています。

3つコースがあり、オススメが真ん中の、レギュラーコース、というところも、「松竹梅の法則」で竹のところに一番売りたいコースをおく、という行動経済学で言うところの「極端性の回避」。よくできています。

服のレンタルサービスでどうやって勝つのか?

この「服のレンタルサービス」、人気が出て市場に浸透すればするほど、つまり、需要が増えれば増えるほど、参入業者が増え、業界内の競争が厳しくなります。

2月5日の日本経済新聞の夕刊にも、特集記事が組まれ、エアー・クローゼット以外にも、14コーデから自分で選ぶことができるエディストクローゼット、など、服を借りられるものはもちろん、高級カバンを1つ借り放題のラクサス、男性向けの高級腕時計が借りられるカリトケなど、服以外のファッション関係のレンタルサービスまで、まさに百花繚乱、雨後の筍のように、各社、工夫を凝らしてサービスを展開し始めました。

では、各社どのように自社の独自価値を出していくのでしょうか。ターゲット層をまず考えてみると、女性の中で、年齢や地域よりも、仕事または育児で忙しい中、時間が欲しい、でも、ファッションに関して、それほど手抜きをしたくない、というライフスタイルと価値観を持っている層、ということになります。

この、仕事が忙しい、でもファッションにかける時間も大事、という「こっちをたてれば、あっちが立たず」という、二律背反(トレードオフ)の心理状態を持つ人たち、という点が重要です。

月額の価格設定を見ると、各社、5800円〜7300円の間で、ざっくりとほぼ横並びです。現段階では、価格の「安さ」で勝負をすることを、避ける方が得策で、前述の、忙しいあなたに、時間をかけずファッション性の高いサービスを提供する、ことに焦点を当てた、サービスづくりをすべきでしょう。

この段階で、低い価格設定で安売りをしようとすると、自社ブランドの見た目の価値が下がることと、当然のことですが、営業利益が下がります。

想定する顧客層が、ファッション性の高いもの、を選びたい、という気持ちでいるので、安いことに越したことはありませんが、訴求するポイントはそこではなく、「うちのサービスであなたがどう変わるのか」を、前面に打ち出すと良いでしょう。

日本経済新聞の記事にも、エアー・クローゼットを利用した35歳女性の方のコメントとして、「エアー・クローゼットの服を着ると、センスが良いと褒められる」というものがありました。こう言われたいことが顧客が感じる価値になります。値段の安さが最優先ではない、ということですよね。

中小企業は服のレンタルサービスに何を学ぶか

では、中小企業は、この事例から、何を学べば良いでしょうか?

まずは、ターゲット層が「何に価値を感じ喜ぶのか」を、明確にすることです。エアー・クローゼット始め各社も、スタイリストが選ぶ、着まわし術などを教えてくれるなど、価格やスペックなどの、物理的な要素ではなく、服を着て仕事をする、外に出る際の、その服の周りにある「付加価値」に、独自性を出しています。これを自社のビジネスに当てはめてみて下さい。

次に、顧客が抱えている悩みを発見し、「自社のプロダクトで解決できることを売る」という点です。

レンタルサービスで言えば、「毎日の服選び・コーデに悩む」という時間的・心理的な悩みを解決しています。

このように、顧客層が心の中で感じている悩みや不安を、いち早く感じ取り、サービス化することが重要と言えるでしょう。

最後に、将来をどう先読みするか、という大きな示唆がこの事例にはあります。

レンタルサービスが普及するということは、「服を買うのではなく、借りる」時代になる、ということを意味しています。

そうなると、アパレルの小売業者は、単純に買う人の層が減る、ということが予想されます。

このような業界の変化と進化に、いち早く気づくべきだ、という大きな示唆を、この事例では考えさせてくれます。

ネットの進化と浸透で、 リアル店舗がEコマースにシェアを取られる、単純な手作業の仕事が機械にとって代わられる、AIにできるようになる、ということと同じで、消費者行動が変わることで、業界の構造が変わることは、私たちの身の回りには数多くあります。

あなたも、ぜひ明日の仕事に、このような意識で臨んでみてください。

■目次

… 1. 特集「アパレルのレンタルサービスに見る、シェアリングエコノミーの新しい形」

… 2. コラム 「なぜみんなと違うことをするの?と怒られる日本人、なぜみんなと同じことをするのと怒られるアメリカ人」

… 3. 時間術「外資系企業と日本企業のいいとこどりをせよ」

… 4. 著作・イベントのお知らせ

… 5. 編集後記

2.コラム:なぜみんなと違うことをするの?と怒られる日本人、なぜみんなと同じことをするのと怒られるアメリカ人

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