仕事の失敗は仕事で返すありません。そのためには、失敗をした時に反省して、「なぜ、失敗したのかな」と原因を考え、改善できる点は改善するようにするといいでしょう。
いわゆる「PDCAサイクル」を回すことです。PDCAサイクルについては、ビジネスパーソンの方々は、もうすっかりおなじみかもしれませんが、とても大切なことです。
PDCAサイクルとは、製造の現場などでよく使われる業務の改善方法です。
Plan (計画)→ Do (実行)→ Check (評価)→ Act (改善)
の4つのステップを繰り返すことで業務を改善していきます。
このPDCAサイクルを繰り返していくうちに、仕事の精度や効率が上がっていきます。
私は『ブラジル』というアイスの商品開発と同時に、『小豆バー』の開発もしていました。
当時、前会長が作った『おぐらす』という小豆の丸型の棒アイスがあったのですが、ある時期から売れなくなってきたので、『おぐらす』を四角い棒のアイスで作って『小豆バー』として売るように言われました。
『おぐらす』は、こしあんのアイスでしたが、私なりに工夫して、小豆の量を多くした、粒あんの『小豆バー』を開発し、前会長に試食してもらうために持っていきました。
前会長は、天才的な味覚感覚の人でしたから、味をみてもらいたかったのです。
「できました!」といって渡すと、前会長は一口食べて、
「うん、わかった」
と、ひとこと言うと、窓の外にバーンと放り投げました。
口にこそ出しませんでしたが、「こんなものはダメだ」という前会長なりの意思表示だったのだと思います。「なんでダメだったんだろう」と考えてもう一度食べてみると、ちょっと堅い感じがしました。そこで、ほんの少しだけ柔らかくする工夫をして作り直し、また前会長のところに持っていったら、今度は「まあ、いいだろう」ということになりました。
発売すると、なんと、爆発的に売れました。製造が間に合わなくて、24時間工場を稼働して、私も応援にかけつけて、ばんばん『小豆バー』を作りました。
今でこそ、小豆のアイスはほかのメーカーからも出ていますが、当時はまだ他社になく、『小豆バー』は小豆アイスの走りだったと思います。
『小豆バー』は、PDCAサイクルを回して成功できたアイスです。
• Plan (計画) 小豆の量を多くした『小豆バー』を作ろう!
↓
• Do (実行) 試作品を作る。
↓
• Check (評価) 前会長のチェックを受ける。
↓
• Act (改善) ダメだったところをあぶりだし改善。
結果として爆発的に売れた!
ちょっと失敗したり、怒られたりしても、ふてくされないで、「なんでダメだったんだろう」と一度、商品や自分と向き合ってみることはとても大事です。
「あとちょっとでだいぶ良くなる」ということがあります。あきらめないで、「あと少しだけ工夫してみる」姿勢が大切です。
よく言われることですが、成功体験を積み重ねていくと、仕事はどんどん面白くなります。成功体験を重ねたいなら、失敗しても、失敗しても、立ち上がってチャレンジすることです。私は文句もいっぱい言われましたが、開発の仕事が面白くて、面白くて、仕方がなかったです。
それに、失敗は「赤字」というマイナスだけではなく、時には、プラスを会社にもたらすことがあります。大失敗して、話題になることで、注目が集まる場合があるのです。
以前の『ガリガリ君リッチ ナポリタン味』の失敗については、テレビ番組で大々的に取り上げられました。これによって、赤城乳業や『ガリガリ君』が取り上げられたことで、失敗によって赤字になってしまった3億円以上の広告効果があったと思っています。
『ガリガリ君』シリーズは、1~2か月に一度の割合で新商品(新フレーバー)を出していますが、これは打ち上げ花火だと思います。いくら人気のある定番商品でも、ずっと販売していると、やがて、売上が下がってきます。下がってくる前に、話題を集めるような花火を打ち上げると、たとえ、それがヒットしなかったとしても、みなさんに「あ、そういえば、『ガリガリ君』最近、食べてないな。たまには買おうかな」と思っていただければ、それでひとつの成功なのです。ナポリタン味も実際、売上的には失敗ですが、広告効果としては大成功をしたわけです。どんな物事にも二面性があることを知っておいたほうがいいでしょう。
何しろ、前向きに、前向きに、明るく進むことです。
眉間にしわ寄せて「また失敗するんじゃないか」と思いながらやっていると、だいたい失敗します。
「思考は現実化する」といわれていますが、その通りで、失敗するかもと思考すると、失敗してしまうものです。
また、「失敗するんじゃないか」という思考にとらわれて、心が入らなくなります。
私は音楽をやっていますが、演奏会の前になると、みんな「失敗したらどうしよう」と眉間にしわを寄せ始めます。
でも、完璧な演奏は機械に任せればいいわけで、一生懸命やったり、「いい演奏をしたい」という思いを込めれば、人を感動させることができるのです。
すると、演奏会は必ず成功します。
大切なのは「思い」です。
商品開発でも大切なのは、「アイスを食べて喜んでいただきたい」という思いであり、一生懸命さです。眉間にしわを寄せていると、そういう気持ちが生まれてこなくなってしまいます。だから、「失敗するかも」という気持ちは、できるだけ持たないようにして仕事に取り組みましょう。