不倫やスキャンダルによる炎上事件が今年も後を絶ちませんでした。インターネットで即座に燃え上がる環境ができましたが、その後はどうなるのでしょう?スキャンダル追及から徹底的に逃げ、姿をくらましたり、芸能活動を休止するという選択をした人はその後どうなったか、「逃げ」は有効か見てみましょう。
1.ペニオク事件
実際には入札できないオークションを語り、手数料をだまし取った詐欺事件が2012年のペニーオークション事件です。ペニオクの宣伝に出て「自分も入札しました」と語っていた芸能人に対し、詐欺の片棒を担いだと激しい批判が集まりました。
これがきっかけで芸能活動を休止した人も何人か出た一方、そのままテレビや表舞台に出続けた人もおり、芸能人の広告責任も問題となった事件です。微妙だったのは、人気の陰りとこの事件の関係です。単に事件関与の批判だけでなく、人気が落ち始めた状況下で、ダメ押しのきっかけになったとも考えられます。
タイミングが良いのか悪いのかわかりませんが、結婚や出産で時期を同じくして表舞台に出なくなった人たちもいます。激しい批判を浴びて芸能の世界に場所を失った人に比べ、逃げ得ともいわれました。そして事件のほとぼりも冷めた頃、ポロポロと芸能ニュースに現れたりし始めています。
2.松居・船越騒動
船越英一郎さんと松居一代さん夫妻の離婚騒動が大きな話題となり、特に松居さんのエキセントリックな発言は注目を浴び、自身の発信をユーチューブで行った結果、松居さんは一躍人気ユーチューバ―と化したそうです。炎上とは違うかも知れませんが、その話題の上り方は内容の奇異性や激しい注目の集まり方など、炎上と同種の燃え方だったかと思います。
一方の船越さんは騒動渦中も発信をほとんど行わず、特に松居さんに対するコメントなどは何も発しませんでした。しかしレギュラー番組の出演は止めずに、顔がやつれたなどと言われつつ、粛々と司会やドラマなどの仕事を続けていました。離婚裁判が進み、徐々に松居さんも発言を抑えるようになり、騒動は自然に話題にならなくなっていったのでした。
船越さんはあえて騒動には自分から触れることなしに、本業の仕事を続けました。炎上商法で話題提供するタレントもいる中、コメントや反論をすればとてつもない関心を呼び、注目を得ることは簡単だったはずですが、そうした注目は拒否するかの如く徹底的に距離を置きました。
3.逃げによる鎮火は可能?
ペニオク事件で沈黙を守ったタレントの中には、そのまま世間から忘れ去られるように消えて行った人もいます。一方で復活をかけて徐々に露出を増やしたり、話題となるニュースを提供したりして、復活を目指そうとしているように見える人もいます。しかし話題と言っても日々流れるニュースの一つに過ぎず、全盛期の人気に匹敵するような取り上げ方をされることはないようです。
炎上などの激しい注目を浴びた際に、一切の発言も言い訳もせず、ただ姿をくらましてしまうという手があります。逃げ隠れしなくともあらゆる取材にノーコメントで通すのも同様です。スキャンダルのような反感を買う行為は、当事者が無視し続けてもしばらくは火がくすぶり続けるでしょうが、いずれ話題からは消えます。流れの速い芸能界などでは次々と新たな話題が登場し、過去の話題は急速に忘れられていきます。
つまり「逃げ」は鎮火には有効といえます。
ただし、一方で大きなリスクを伴います。鎮火するということはイメージが薄まり、人々の記憶も薄まることです。その原因となった問題を許すとか、受け入れるとかではなく、単純に関心が薄れるのです。結果としてスキャンダルの存在も忘れ去されると同時に、その当事者自身をも忘れてられていくのです。
逃げ続ければ、いつか炎上は収まります。しかし同時に有名人として有名ではなくなっていく恐れがあるのです。これは果たして成功なのでしょうか?スキャンダルで批判されなくては済んでも、本業の芸能の仕事ができなくなってしまっては元も子もないのでは。
4.無名より悪名
有名人から有名を取ってしまえばただの人。「悪名は無名に勝る」といったのは竹下元首相という説がありますが、それはさておき、良くも悪くも存在感を認識されることは政治でも芸能でも、認識されることが生産性につながる職業には、きわめて重要です。
それを捨ててまで批判から逃げるなら、もはや仕事に未練がないのか、あるいは何年かのブランクごときで絶対に忘れられない絶対の自信があるのか、どちらかということになります。そこまで読んでの逃げであれば逃げ得は成立します。しかしこれが許されるのは本当に有名人の中でもほんの一握り、恐らくワイドショーや芸能ニュースを賑わせること(=話題作り)で芸を成立させているのではない人でしょう。
伝統芸能などがあてはまります。テレビに出なくとも、ネットで取り上げられなくとも芸が成立する人たちは、徹底無視は一つの選択といえるでしょう。世界的スターであれば、外国に行ってしまうのも手です。世界的スターとして、世界中で仕事があるのであれば成り立つ選択肢です。
要は「有名であること」を維持せずとも生計が立てるのなら、「逃げ」は選択肢であり、タレントのように「有名であることが価値」という立場では、逃げはその価値の消失につながりかねないきわめてリスキーな選択です。逃げ得がどうか、自身のポジションの位置付け次第といえるでしょう。
11月25(土)都内での謝罪セミナーでもこんなことをお話しする予定です。