アマゾンはホールフーズマーケット買収で何を目論んでいるのか?=理央周

アマゾンはリアル進出で何を狙うのか?〜ホールフーズ買収とアマゾンブックス

アマゾンが、137億ドルという巨額で、米国のスーパーマーケット、ホールフーズ・マーケットを買収する、というニュースが入った。

ホールフーズ・マーケットといえば、オーガニックの野菜などをはじめとする、生鮮食品を中心に扱う、全米に4700店舗を展開する巨大スーパーマーケットチェーン。

このニュースが発表されてから、現在リアル店舗を持つ他のチェーン店の株価が落ちるなど、小売業界を中心に、様々な業界に衝撃が走った。それほどインパクトのある買収なのだ。

【アマゾンは何を狙っているのか?】

インターネットでの販売を中心にするアマゾンは、何を目的に、この巨大なスーパーマーケットを買収するのか?

まず考えられるのは、リアルの店舗を持つ、ホールフーズ・マーケットの運営ノウハウだろう。

アマゾンは、アマゾンブックスというリアル店舗を全米に数店舗持っている。そこでは、アマゾンにしかできないことをポリシーに、カスタマーレビュー4以上のランキングの本を並べたり、1万レビュー以上のコーナーを作ったりと、ここまで、リアルとネットの融合を試行錯誤してきた。

まさに、インターネット黎明期にできた言葉で、Eコマースとリアル書店の融合をさす、クリック&モルタルを地でいく形だ。

アマゾンフレッシュのサービスでは生鮮食品を、一部地域ではあるが、配達するサービスも始めた。

しかし、やはりすぐに傷んでしまう足の短い生鮮食品は、アマゾンが得意としてきた書籍などの商品群と比較すると、仕入れから鮮度高く顧客に届けるという、サプライチェーンもバリューチェーンも異なるため、運用ノウハウが欲しい、と考えられる。

もう1点は、以前このメルマガでも書いたように、アマゾンの命綱である顧客データ、それもリアル店舗でのPOSデータ的な情報の入手は、アマゾンにとって大きな魅了であろう。

購買履歴に基づく数字での分析に加えて、購買者音リアルの場所での購買履歴データは、消費者インサイトとして蓄積し、アマゾン得意のレコメンデーションに使うなど、これからのビジネスに活用できるであろう。

これは私の推測だが、上記の目的以外、というかリアルとネットの融合の枠を取り払い、人が物を買う、という行動を押さえた上で、全く新しいビジネスモデルを構築しようとしているのかもしれない。

【中小企業はアマゾンの何を参考にすべきか?】

まず参考にすべきは、「飽くなき挑戦を事業コンセプトから外れずに実践する行動力」だろう。

ビジネスはもうここまでだ、という制限を自社に設けず、成長拡大を目指す。しかし、自社の核になる事業ドメインであるところの、「小売業」から離れない集中度が素晴らしい。

もう1点は、自社にしかできない独自性を、常に追求する姿勢だ。

ネット書店として、実施しているカスタマーレビューを、リアルの店舗にも反映する。これは、リアルの書店にも難しいし、もちろんネット専売書店にはできない。

自社の特徴とリアル書店にできることを組み合わせた、いわゆる新結合なのだ。

成長志向、集中と独自性。企業の事業活動に必要な、3大要素を、アマゾンはどの事業でも抑え、さらに進化さえている点を、中小企業でも見習うべきであろう。

■目次

… 1. 特集 「アマゾンはホールフーズ買収で何を狙うのか?」

… 2. コラム 「名古屋発のヒット商品が生まれる理由」

… 3. 書評  「時間の使い方を科学する」

… 4. ワンポイント時間術「絞り込むほどに見えてくる「結果」の後ろ姿」

… 5. 著書・イベントのお知らせ

… 6. 編集後記

2.コラム:「名古屋発のヒット商品が生まれる理由」

記事の新規購入は2023/03をもって終了しました